利用者の受け入れをする経営者の美辺香澄さん(右)=4日、名古屋市中村区
ビジネスマンが行き交うJR名古屋駅近くのビルの一室に、いつでも予約が取れる「駆け込み寺」のような託児所がある。一時預かり専用の「はないと」(名古屋市中村区)。経営する美辺(みなべ)香澄さん(29)も一児の母親で、仕事と子育ての両立に苦労した経験から起業を思い立った。昨年4月の開業から丸1年を迎え、「女性の自由な働き方を応援したい」と意気込む。
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4日、愛知県安城市の主婦(28)が託児所を訪れ、長女(3)を預けた。「4月から子どもは幼稚園に通う。そろそろ仕事について考えようと思って」。そう話すと、名駅前で開催される就職セミナーに向かった。
託児所の利用者は、現在1日10人余り。病院の通院や美容院の予約など、3~4時間の利用者が多い。東京や大阪から子連れで出張に訪れ、父親や母親が子どもを預けて仕事に向かうケースもあるという。
起業のきっかけは、仕事と子育ての両立を目指す中での挫折体験だ。名古屋市内の監査法人で非常勤で働いていたが、急な仕事が入った時に長男(2)を受け入れてくれる託児所がなかった。たとえ見つけてもサービス内容に満足できなかったという。
「働けば働くほど仕事を頼まれ、託児の予約が取れずに困った」と美辺さん。夫も同業で多忙な日々を送る。長男が1歳になった時に「自分の理想の施設をつくりたい」と事業計画を練り始め、金融機関からの融資で昨年2月に運営会社を起業した。
自身の体験を踏まえ「いつでも予約が取れる」がセールスポイントだ。予約の電話は美辺さんの携帯電話に転送され、24時間体制で受け付け可能。アレルギー対応の給食も提供するなどサービスにも気を遣う。料金は平日午前8時から午後6時まで、30分あたり500~850円。名古屋市の認可保育園の一時預かりの費用は高くても6時間1200円だが、「はないと」では家賃や25人のスタッフの人件費が影響し、採算はギリギリという。
起業時には「もうからないよ」…