店の前に立つ原口さん。「高校野球のおかげで今がある」と話す=横浜市港北区
グルメの激戦区、米・ニューヨークで注目のラーメン店「YUJI RAMEN」(ユージラーメン)が、日本に初出店した。店主の原口雄次さん(36)は作新学院硬式野球部のOB。「自分が世界で勝負できるのも野球のおかげ」と、甲子園での母校の活躍に自身も奮い立っている。
原口さんは宇都宮市出身。甲子園にあこがれて、作新学院硬式野球部に入部した。3学年下には小針崇宏監督(33)がいる。朝から晩まで練習漬けの日々だったが、1998年夏の栃木大会は1回戦で敗れた。3年生の原口さんはサードの控え選手。「悔しくて、しばらくは高校野球のテレビ中継を見られませんでした」と振り返る。
大学時代に米国に留学し、帰国してから料理に興味を抱き、自分の店を持ちたいと思うようになった。2007年に米・ボストンにある魚の卸を中心とした商社へ就職し、魚の知識、さばきかた、流通まで一から勉強した。
原口さんのエネルギーの源になっていたのが、母校野球部の岩嶋敬一部長(54)の言葉だ。岩嶋部長は85年に硬式野球部コーチに、87年に部長に就任して以来、30年以上にわたって部を支えてきた。
「お前たちが野球部でやってきたことは世界でも通用する」「野球部の生活より社会に出てからの方がずっと長い。社会に出てからこそ、ここでやってきたことの真価が問われる」。そんな言葉を励みに、「世界で勝負できるようになってやる」と努力した。
商社時代に目をつけたのが「魚の有効活用」。「アメリカでは魚に対する知識も料理法も浸透していない。真の魚文化を広めていきたい」と、捨てられていた魚のアラを使ったラーメンを開発した。
12年にニューヨークのブルックリンに店を持った。マグロのアラをローストしたスープと、大トロの一部の「ハラモ」を具材にした「ツナコツラーメン」や、「ベーコンエッグまぜ麺」などを提供。現地の情報誌などにも採り上げられ、ニューヨークで最も注目されるレストランに成長した。
母校が出場した選抜高校野球開幕直前の先月16日、横浜市の新横浜ラーメン博物館に出店した。内装には大谷石を使用し、麺も栃木県から仕入れている。野球部では試合にも出られず、不本意な結果に終わったが、あの時野球にかけた情熱は今も健在だ。原口さんは「新しいスタート地点に立ったという思い。これからも岩嶋部長の言葉を胸に、世界で勝負していきたい」と、新たな決意を抱いている。(佐藤太郎)