母親の岩城由香梨さんに抱かれて眠る琉生くん=2016年4月20日午前10時21分、熊本市西区の慈恵病院、細川卓撮影
幾人もの貴い命が奪われた熊本地震。発生翌日の混乱のなかで新たな命が生まれ、間もなく1歳を迎える。熊本市で里帰り出産した母は、帰省のたびに感じる復旧の歩みに我が子の成長を重ね、いつか熊本の力になってと願いを込める。
特集:熊本地震
東京都目黒区に住む岩城由香梨さん(28)の長男琉生(るい)くんは最近、つかまり立ちができるようになった。「わー、うー」と声を上げ、夫真也さん(33)が「高い高い」してあやすと上下4本生えた歯を見せて笑う。15日に1歳になる。
昨年4月14日夜、由香梨さんは出産に備えて帰省していた熊本市南区の実家で激しい揺れに襲われた。テレビやパソコンが倒れる中、おなかをかばい、庭にとめていた車に避難した。出産予定日は1週間後。だが翌15日未明に産気づき、信号が消えひび割れた道を、母親が運転する車で慈恵病院(熊本市西区)に向かった。
度重なる余震の中、分娩(ぶんべん)室で約7時間半の陣痛に耐えた。15日午前10時23分、2770グラムの男の子が元気な産声を上げた。胸に抱いたとき、涙があふれた。
その15時間後、本震が発生。…