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約束の映画、晃の券も一緒 熊本地震、犠牲になった友へ

作者:奥正光  来源:asahi.com   更新:2017-4-17 12:35:57  点击:  切换到繁體中文

 

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大和晃さんの形見のジージャンを見つめる友人の西川真生さん。タンスの上には大和さんがまいた種もみから育った米や大和さんの服など思い出の品がおいてあった=12日、熊本市東区、福岡亜純撮影


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自宅の部屋に飾られた1着のジージャン。西川真生(しんせい)さん(23)は毎晩、寝る前にじっと見つめる。目に浮かぶのは、愛用していた友の姿だ。


特集:阿蘇大橋周辺の被害地図


特集:熊本地震


熊本地震の本震から1年の16日、本震で起きた土砂崩れに巻き込まれ亡くなった大和晃(ひかる)さん(当時22)の一周忌法要が熊本県阿蘇市で営まれた。西川さんも参列し、「元気にやっているよ」と手を合わせた。


1年と1日前、4月15日の夜。熊本市東区の西川さんの自宅を晃さんが訪ねてきた。前日の前震で、西川さん宅は壁にひびが入り、水が出なくなっていた。


晃さんからはすぐに「大丈夫?」とLINE(ライン)で連絡が来た。状況を知った晃さんは、2リットル入りの水のペットボトル6本を、阿蘇市の自宅から車で届けにきた。2人でファミレスに出掛けて食事をし、帰りの車内では恋の話や公開を控えた映画の話題で盛り上がった。


「映画、一緒に行こう。またね」。自宅まで送ってくれた晃さんと約束し、いつもの笑顔と黄色い車を見送った。


その1時間後。本震が襲った。前震のときにはすぐに来た連絡がない。携帯にかけてみたが、通じない。晃さんの母忍さん(49)と初めて電話で話した。「晃くんは帰ってませんか? 携帯も通じない。どこかに避難して携帯の電池が切れたのならいいけど」


晃さんは自宅に戻っていなかった。もしかして。不安が胸をよぎった。あの時、もっと長く話をしておけば……。罪悪感のような感情がどんどん膨らみ、抑えられなくなった。


電話で話しながら、その気持ちを察した忍さんは「自分を責めないで」と声をかけた。



益城(ましき)町の中古車販売店で働く西川さんは5年前、高校の同級生だった寺田舟希(しゅうき)さん(23)を通じ、晃さんと知り合った。寺田さんは熊本学園大に入学し、講義で晃さんの隣に偶然座った。人見知りでおとなしい性格同士。すぐに打ち解けた。


食事にドライブにボウリング。社会人と学生で立場は違っても、3人はいつも一緒だった。だが、本震後、晃さんの行方はわからないままだった。


続いていた地上での捜索を、県は5月に中断。両親はあきらめることなく、現場に通い、晃さんの姿を捜し続けた。


その姿を西川さんは報道で知る。命に代えても息子を見つけたいという執念に心を打たれた。自分も現場に行きたい。だけど、どんな顔をして両親に会えばいいのだろう。気持ちは揺れ続け、足を運べなかった。


7月24日、谷底で黄色い車体の一部が見つかった。両親から「県が捜索を再開する」という連絡を受けた西川さんは寺田さんと8月9日、現地で捜索を見守った。晃さんの両親とは初対面。忍さんは「ありがとう」と、熊本市から来たことへの感謝を伝えてくれた。晃さんの遺体はその2日後に車から出された。


8月21日に営まれた葬儀のとき、2人はスマホに入っていた3人一緒の写真を両親に渡した。その後も月命日に近い休日には大和さん宅に通うようになった。自分たちが知る晃さんのことをすべて伝えた。「お兄さん(翔吾さん)が大好きでしたよ」「ジージャンを買おうと思っていたら、あげると言ってくれたんです」


晃さんの父卓也さん(58)は「晃は、いい友だちといたんだ」と感じた。


9月、2人は晃さんと約束していた映画を見た。買ったチケットは3人分。1週間後、晃さんの分のチケットとパンフレットを両親に届けた。パンフレットをめくりながら、忍さんは涙を流した。


今年2月、晃さんの友人の結婚式で4人が顔を合わせた。晃さんのいない大学を寺田さんが退学し、働き始めたと両親は知った。忍さんは残念がったが、卓也さんは「それはそれで良かたい」と声をかけた。


卓也さんの頭には、晃さんとのやりとりが浮かんでいた。4年で卒業できそうにない息子に「頑張らんでどうすっとや」。地震後「本人なりに頑張っていたはず。もう少し話を聞いてやれば」と悔やんでいた。


西川さんらが訪れたある日、卓也さんは、晃さんの部屋からジージャンを持ち出してくると、西川さんに渡した。卓也さんの目には、西川さんが明るく振る舞いながらも、時折つらそうな表情を浮かべているように映る。「気持ちを抑えようとするところが晃と似ている」


まるで息子のように接してくれる2人に、西川さんは救われていると感じる。今はもう、ためらいはない。この日も、寺田さんと一緒に「晃に会いに行こう」と阿蘇に向かった。(奥正光、後藤たづ子)




 

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