LinQの高木悠未さん=福岡市
「ロコドル」が熱いらしい。地方を拠点にする「ローカルアイドル」の意味で、専門家が「今は毎週、どこかで一つは誕生している、ロコドルブーム」と表現するほど。約1300組が活動する群雄割拠の中、福岡は特に盛り上がっていると聞き、事情を調べてみた。
ロコドル、がむしゃらな日々 SNSで本音、東京遠征も
アイドル事情に詳しい「日本ご当地アイドル活性協会」の代表金子正男さん(41)によると、福岡県では3月上旬時点で69のアイドルグループが活動。1県平均の28グループを大きく上回る。2011年にAKBグループのHKT48がデビューしたことや、AKB総選挙が15年に福岡で開催されたことなどで「アイドル文化が確立された感がある」という。
金子さんの調べでは、2005年末から今年3月までのオリコンCD週間チャートで、最高順位が50位以内にローカルアイドル(東京のアイドルは除く)が入った回数は247回。福岡のアイドルはこのうち64回で約26%を占める。「福岡は全国的にも3本の指に入る盛り上がりで、九州のアイドルの見本にもなっている」という。
「福岡はヲタ(熱心なファン)が集まりやすく、アイドルが活動しやすい」。金子さんは交通の便の良さを挙げ、「格安航空機で東京からファンが来やすいし、アイドルの側もライブやテレビ出演と宣伝活動をしやすい」と分析する。
また、井上陽水さんやCHAGE&ASKA(チャゲアンドアスカ)などの有名なアーティストを生んだ地で「音楽の町」でもあることも影響しているという。金子さんは「過去にバンドで活躍していた人がアイドルをプロデュースするなど、優秀なスタッフが多い印象がある」と話す。
このうち11年にデビューし、福岡のアイドル界を盛り上げてきたのがLinQ(リンク)だ。「Love in 九州」の頭文字を取ったユニット名で、歌詞にも「もつ鍋」「山笠」といった地元愛が盛り込まれている。
センターを務める高木悠未(ゆうみ)さん(19)は「東京まで行かなくても、福岡って意外と芸能活動しやすい環境だと思う」と話す。福岡でも地元テレビやラジオの収録が多くあり、宣伝しやすいのが魅力という。
もちろん、アイドルの聖地東京でのライブなどの活動も欠かさない。「お客さんの気持ちをつかむため、がむしゃらです」。数年前までは「ご当地アイドル? マイナーだね」と言われ悔しい思いもしたが、今ではLinQ目当てに福岡に来てくれるファンがいる。ファンの3分の1は東京など県外の人だという。
HKT48で何度も選抜メンバーに入る渕上舞さん(20)は「天神などを歩いてたら、『あ、あの子は…!』って感じでアイドルの子をよく見ます。福岡ではアイドルって身近な存在なのかも」。東京へ移動する空港や飛行機で鉢合わせしたり、HKTに入る前に知人がロコドルになったりしたりといった話を何度か聞いたことがあった。
一方で、福岡のロコドル熱に不安なことも。「身近なアイドルが多く盛り上がっていて良いけど、ファンがDD(誰でも大好き)になりやすいのかな。やっぱり、『一番はHKT』と言ってもらいたいですね」(緒方雄大)