殉教者を追悼する式典でスピーチするローマ法王=AP
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は22日、ローマ市内で行われた殉教者を追悼する行事の中で、欧州に渡った難民らを収容するキャンプを「強制収容所」と呼んだ。米ユダヤ人団体は「遺憾な言葉の選び方だ」と反発し、法王に再考を促した。ロイター通信が伝えた。
法王は、昨年4月にギリシャ東部レスボス島の難民キャンプを訪れた際に出会った、キリスト教徒の妻を過激派に殺されたイスラム教徒の難民男性に言及し、「彼が強制収容所を出ることができたのかは分からない」と語り、多くの難民は今なお難民キャンプの中に取り残されていると批判した。
これに対し、米国ユダヤ人協会(AJC)は声明を出し、「移民の生活状況は困難であるかもしれないが、強制収容所ではない」として、第2次世界大戦中にナチス・ドイツがユダヤ人らを強制収容所で労働させ、大量虐殺した悲劇と「比較されるものはない」と抗議した。
法王が同島を訪問したのは、欧州連合(EU)とトルコがギリシャに渡った難民・移民を原則トルコへ送還することで合意した直後。国際移住機関(IOM)によると、ギリシャには現在、難民受け入れ制度が整ったドイツなど欧州北部への渡航を希望する難民・移民ら約6万人が、難民キャンプなどに滞在している。(ローマ=山尾有紀恵)