岸田文雄外相は1日、トルクメニスタンで開かれた中央アジア5カ国との外相会合に出席し、運輸・物流分野の近代化のため240億円の支援を表明した。豊富な天然資源を求め、中国が中央アジアへの進出を強めるなか、影響力を確保する狙いだ。
日本政府は2004年から、中国とロシアに接する地理的な重要性に加え、天然ガスやレアメタルなどの豊富な資源がある中央アジアとの関係を強化しようと外相会合を主導してきた。会合ではこのほか、5カ国からの日本へのビザ発給要件の緩和や人材育成のため今後5年間で2千人に日本での研修の機会を提供することも確認。岸田氏は会合後の記者会見で「日本と中央アジア諸国との関係をいっそう強化するよい契機になった」と語った。
中央アジアでは近年、中国の影響力が強まっている。日本貿易振興機構によると、世界第4位の埋蔵量を誇るトルクメニスタンの天然ガスの輸出先は、11年に中国がロシアを抜いてトップとなり、現在は大半が中国に輸出されている。また、「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)の中間地点にも位置し、中国によるインフラ整備や投資も進む。
危機感を強める日本は15年、安倍晋三首相が日本の首相として初めて5カ国全てを訪問。岸田氏は今回、5カ国の外相に対し、実践的な協力を強調した。
中国は今月、初の「一帯一路」の首脳会議を開く。外務省幹部は「日本のペースで協力し、発展の方向性が日本色に染まればいい」と期待する。(笹川翔平)