米軍が韓国に配備する高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の費用を巡り、両国の間で不協和音が出始めた。韓国に負担を求めるトランプ米大統領の発言がきっかけ。間もなく誕生する韓国新政権の対応次第では、米韓間の外交懸案になる可能性がある。
トランプ氏は4月27日のインタビューで「韓国側が支払うのが適切だと伝えている。10億ドル(約1112億円)のシステムだ」と発言した。米韓関係筋によれば、米韓間で発言に対する事前調整はなかった。
驚いた韓国大統領府の金寛鎮(キムグァンジン)・国家安保室長とマクマスター米大統領補佐官(国家安全保障担当)が30日に電話で協議。米国が施設の展開費用などを負担する従来の合意を確認した。
だが、マクマスター氏は米FOXニュースとのインタビューでは、費用負担を巡る再交渉を示唆。5月1日の韓国国防省報道官の記者会見では、記者団が「従来の合意通り」とする報道官の説明に納得せず、質問がこの問題に集中した。
米韓関係筋は、マクマスター氏の発言について「トランプ氏の発言は否定できない。今後、再交渉は避けられないだろう」との見方を示す。韓国側は現在、年間9200億ウォン(約900億円)に物価上昇率を加えた米防衛費を負担。2019年度からの韓国の費用負担を含めた新協定を巡る交渉が年末にも始まる。
韓国大統領選で優位に立つ最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)候補の陣営は「次期政権がTHAAD配備を決めるべきだ。配備の決定に当初から重大な欠陥があった」と主張。韓国の専門家からは、THAAD配備に反対する中朝両国などを利する行為だとして懸念する声が出ている。(ソウル=牧野愛博)