米シカゴ大学が中心となった「比較憲法典プロジェクト」のデータを使って、東京大学のケネス・盛・マッケルウェイン准教授が、日本の憲法を分析した。
特集:憲法を考える
耕論:憲法70年、変わらない意味
プロジェクトは、米国憲法が施行された1789年以降に存在した約900の成文憲法を英語に翻訳、760を超える項目についてデータ化した。日本からは、1946(昭和21)年に制定された日本国憲法と、1889(明治22)年に公布された大日本国憲法(明治憲法)の二つの憲法として扱われている。
■制定70年、世界一の「長寿」
現存の非改正憲法の年齢
改正されたことがない現行憲法では、制定から70年たった日本国憲法は世界一の「長寿」となっている。2位のデンマークは63年、3位のナウルは48年だ。
■歴代1位は80年
歴代の非改正憲法の年齢
現在、残っていないが、過去に存在した憲法も含めて、改正していない期間を比べると、1861年にできた旧イタリア王国の憲法が80年を超えて歴代1位の「長寿」、日本国憲法は2位となっている。日本の明治憲法も、58年間改正されておらず7番目だ。
■「短い」ことも特徴
世界の現行憲法の長さ
プロジェクトで英語に翻訳した現行憲法のうち、単語数が最も多いインドは14万6385。平均は、2万1千で、日本は4998。日本国憲法は、「短い」ことも大きな特徴だ。
■政治制度は少ない
世界の憲法での政治制度の記載
世界各国の憲法に記されている選挙制度や裁判所の編成、地方自治に関する規定など政治制度について30の項目で分析すると、日本国憲法は少ない。
マッケルウェイン准教授は、「日本国憲法は、国会議員の定数や選挙制度など、『別に法律で定める』としている項目が多いため、変えるときも憲法の改正せずに法律の改正で済んできた。これも日本の憲法が『長寿』の原因のひとつだろう」と分析する。
■権利の多さも長寿の要因
世界の憲法での権利の記載
世界各国の憲法に記されている思想や言論、信教の自由、教育の保障など国民の権利について、52の項目で分析すると、日本国憲法は多い。
マッケルウェイン准教授は、「日本国憲法は、制定当時としては先進的で、権利についての規定が多く盛り込まれた。このため、新たに権利を憲法に追加する必要性が少なく、これも『長寿』の原因のひとつだろう」と分析する。