5・3集会のパネルディスカッションでは「『不信』『萎縮』を乗り越えて」をテーマに意見が交わされた=3日午後、神戸市中央区、安冨良弘撮影
朝日新聞阪神支局襲撃事件を機に始まった「言論の自由を考える5・3集会」(朝日新聞労働組合主催)が3日、神戸市であった。30回目の今回のテーマは「『不信』『萎縮』を乗り越えて」。事実よりうその情報に民意が誘導される「ポスト真実(トゥルース)」が時代を象徴する言葉として語られる中、メディアを取り巻く現状や課題についてパネリストらが議論。市民ら528人が参加した。
特集:阪神支局襲撃から30年
タイムライン:記者襲撃、あの夜から
東京工業大准教授の西田亮介さんはフェイク(偽)ニュースが横行する背景として「インターネットの普及で情報量が激増し、真偽を見極めようとしてもどれが本物なのか判断しにくくなっている」と指摘した。
作家の高橋源一郎さんは「著名な人でさえ、『反日』というような言葉を平気で使うようになってきた。以前なら許されなかったはずなのに、社会が『あの人ならしょうがない』と違和感をもたずに受け止めてしまっていることが怖い」と警鐘を鳴らした。
高橋純子・朝日新聞政治部次長は「政治家が言っていることが本当なのか、新聞社は多くの労力をかけてチェックしている。そこがなかなか分かっていただけない」と記事を出す側のもどかしさを打ち明けた。
コーディネーターを務めたジャーナリストの池上彰さんは「30年前、憲法記念日に新聞社に攻撃があったことを忘れてはならない。メディアがしっかりしなければ社会はダメになる。改めて原点を確認したい」と締めくくった。