英下院(定数650)が3日、6月8日投開票の総選挙に向けて解散された。与党・保守党首のメイ首相は、欧州連合(EU)との離脱交渉に対する自らの方針への信を国民に問い、政権基盤の強化を狙う。現時点では野党の支持率低迷もあって、保守党の圧勝が予想されている。ただEUは英国の総選挙の結果にかかわらず、厳しい姿勢で交渉に臨む考えだ。
イギリス総選挙、与党保守党優勢の見込み 野党は苦戦
「この国には、強く安定した政権と、長期的にみて英国のために正しい決断を下せるリーダーシップが必要だ」。メイ氏は2日、英BBCにこう語った。
離脱交渉でメイ氏は、欧州単一市場への残留より移民規制を重視する強硬路線だ。野党などは「英経済を破壊する」と批判する。
それでも世論調査YouGovによると4月28日現在、保守党への支持は44%と突出する。メイ氏の指導力に期待する人が多いためとみられる。一方、最大野党の労働党は、支持者が離脱推進派と慎重派に二分され、31%と苦戦している。
EUの政策立案などを担う欧州委員会は3日、英国との交渉方針について詳細な指針案を発表した。離脱前に英国に入国していたEU加盟国民が5年以上住み続ければこれまで通り永住権を認めることや、離脱決定前に負担が決まっていたEU分担金の支払いを求めることなどを明確化した。
分担金の額については、英紙フィナンシャル・タイムズが3日、1千億ユーロ(約12・2兆円)に達する可能性があるとの試算を報じた。ロイター通信によると、英国のデービスEU離脱担当相は「払う気はない」と即座に否定。これに対し、EU側で交渉を率いるバルニエ欧州委員会元副委員長は「時計は進んでいる。苦痛なしで離脱できるというのは幻想だ」と反論。選挙後の速やかな交渉入りを求めた。
4月26日にロンドンでメイ氏と会談したユンケル欧州委員長がドイツのメルケル首相に「彼女は別の世界にいる」とぼやいたと報じられるなど、両者の主張の隔たりは大きく、交渉は難航を極めそうだ。(ロンドン=渡辺志帆、パリ=津阪直樹)