アヤカプ・ハマム内部で、湯沸かしに使われていたとみられる場所=12日、トルコ・イスタンブール旧市街、メスット・クチュクアルスラン撮影
トルコの最大都市イスタンブールで、オスマン帝国最盛期の16世紀末に建設された伝統的な公衆浴場「ハマム」が、300万ユーロ(約3億7千万円)で売りに出されている。帝国を代表する建築家の設計で、関係者は再生を待ちわびている。
販売されているのはイスタンブール旧市街の「アヤカプ・ハマム」。イスタンブールで最大規模のモスク「スレイマニエ・ジャーミー」などの設計で知られ、「オスマン帝国史上最も偉大な建築家」とされるミマール・シナンの設計で、1582年に建設された。
建物はトルコの文化遺産。現在は材木倉庫として使われ、老朽化が目立つが、古いれんがや半球状の天井からは往時がしのばれる。所有者によると、2002年に大学の研究者からシナン設計のハマムだと知らされた。レストランへの改修も試みたが断念し、今回、周囲の土地とまとめて売りに出したという。
トルコ文化省で文化財保護を長年担当した建築家フュセイン・バシュチェティンチェビック氏は「シナンの設計の特徴が随所に見られる貴重な遺産だ。ハマムとして使うのは難しいが、次世代に継承されるよう祈っている」と話す。(イスタンブール=其山史晃)