調査で聞き取った内容を書いた紙を前に語りあう阿部彩教授(中央)ら=首都大学東京
近年、社会問題として注目される「子どもの貧困」。その現状は、報道などで徐々に明らかになってはいますが、まだ解明できていないことも数多くあります。そこで、客観的なデータをもとに、貧困の実情や仕組みを明らかにし、解決策を探ろうとする研究が進んでいます。
特集:子どもと貧困
「シャツは何枚いる?」
3月中旬、東京都内のビル会議室で、首都大学東京(八王子市)の阿部彩教授は川崎市などの母子世帯の女子高校生8人にこう問いかけた。
「洗って干すことを考えると、3枚はいるかなあ」
聞いているのは、本人たちが最低限必要だと思うものの数。聞いた内容は金額に直し、全体の費用を明らかにする。阿部教授は「最低限の生活といってもイメージしにくい。実際に聞くことで、貧困の基準の置きどころを考えるための調査です」。
阿部教授は2000年ごろから、相対的貧困率を自主的に計算して公表。講演や出版なども精力的に行い、子どもの貧困問題を世間に訴えてきた。狙いは貧困の現状を、本人たちの実情に即して「見える化」すること。そしてその原因を調べ、解決策を練ることだ。
昨年度は、調布市など都内4市…