水揚げされたカツオ=和歌山県すさみ町、大森浩志郎撮影
さっぱりとした赤身が美味の「初鰹(はつがつお)」。だが近年、カツオの不漁が各地で続いている。「生活できない」「後継者がいない」。出口の見えない状況に悲鳴があがっている。
「カツオだけじゃ生活できん。みんな思っちゅうがやないかね」。カツオ一本釣り漁の拠点として知られる高知県黒潮町の漁師、今村文夫さん(69)はため息をつく。
40年ほど前は1日150匹釣れたが、今では10匹ほど。近場でタイなどを釣って収入の足しにする。「昔はシーズンの3~6月だけで一年の生活費を稼げたが、今は年中働いても足らん。厳しいよね」
農林水産省統計部によると、県内の2015年の漁獲量は全国5位の約1万5千トンで、1984年(約6万2千トン)の4分の1以下だ。県や有志の企業などは4月、「高知カツオ県民会議」を発足させた。資源保全を後押しする狙いがある。
和歌山県でも不漁は深刻だ。県水産試験場によると、主要3港(串本、すさみ、田辺)の昨年の水揚げ量は227トンで、ピーク時(00年、1957トン)の1割ほど。今年は最盛期の3~4月が50トンで昨年同期の3分の1だった。和歌山南漁協すさみ支所の福山真二さん(58)は「取れなんだら継ぐ人がいない。漁師が減る悪循環だ。こんな感じが続くなら飯を食っていけない」と話す。
同県すさみ町は、船で仕掛けを引いてカツオを誘う「ケンケン漁」で知られる。すぐに血抜きをして鮮度を保つ。刺し身で食べるのが一番といわれ、もちもちと舌にまとわりつく食感から、「もちかつお」とも言われるほどだ。
例年、4月には、カツオの試食や早下ろし選手権がある「すさみケンケンかつお祭り」が開かれ、多くの人でにぎわう。今年は当日の水揚げがほぼゼロだったので冷凍カツオを使った。昨年は不漁を理由に中止しており、町観光協会の楠本明治(めいじ)事務局長は「町にとって死活問題だ」と嘆く。(佐藤達弥、大森浩志郎)
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