歌舞伎座の「七月大歌舞伎」で二代目市川齊入を襲名する市川右之助さん(左)と市川海老蔵さん=28日、東京都千代田区の帝国ホテル
東京・歌舞伎座で7月3日に開幕する「七月大歌舞伎」で、歌舞伎俳優の市川右之助さん(69)が、市川家に伝わる名跡の市川齊入(さいにゅう)を二代目として襲名することになった。28日、東京都内のホテルで開かれた会見で、右之助さんは「この年で襲名していいのかとも思いましたが、もう一回がんばりたいという気持ちが湧き上がってきている」と意欲を示した。
会見には市川海老蔵さん(39)も出席。父を2013年に亡くした海老蔵さんにとって右之助さんは「父のような存在」という。「後続の指導にあたり、歌舞伎の芸の継承役を担ってほしい」と話した。
右之助さんの曽祖父は、上方歌舞伎の初代市川右団次(後の初代齊入)で、祖父は二代目右団次。右之助さんは市川寿海の部屋子となり、1955年に初舞台を踏んだ。寿海没後、73年に海老蔵さんの父、十二代目市川団十郎に入門した。女形、立役(たちやく)を兼ねる役者で芸域は広い。
襲名演目は、市井の小悪党が活躍する河竹黙阿弥作の生世話(きぜわ)物「加賀鳶(かがとび)」。右之助さんは「女按摩(あんま)のお兼」を演じる。「初代齊入の父は、黙阿弥と組んだ四代目市川小団次で、ゆかりを感じる演目。この大役は大変にうれしいです」と抱負を語った。
会見で海老蔵さんは、早期の肺がんが見つかり「七月大歌舞伎」の休演が決まった中村獅童(しどう)さん(44)についても言及。「公私ともに仲が良いので、本当に悲しくて。彼の分まで頑張らないと。彼は責任感の強い人で『悔しい』と言っていた。『必ず良くなる』という言葉もあるので、かえってきて大きな花を咲かせることを期待しています」
「七月大歌舞伎」は27日まで。(米原範彦)