森友問題の国会審議を空費させた政府側の答弁
事実を確認しない官僚。事実と異なる説明をする閣僚。学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐる国会審議を検証して明らかになったのは、事実解明に後ろ向きな政府の姿勢だった。終盤国会では「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題も焦点になっている。政府は事実に向き合えるのか。
特集:森友学園問題
3月1日の参院予算委員会。「自民党国会議員の事務所の面会記録を独自に入手した」。森友問題をめぐり、共産党の小池晃氏が記録にある近畿財務局の担当者名を挙げ、内容の確認を政府に求めた。
記録は、有利な条件で国有地の取引を求める学園側の陳情内容を《上から政治力で結論が得られるようにお願いしたい》と記し、「不当な働きかけは一切ない」(財務省の佐川宣寿理財局長)との政府答弁を揺るがしかねない内容だった。佐川氏は「何のことか承知していないのでコメントは困難だ」と突っぱねた。
翌日、鴻池祥肇・元防災担当相の事務所が記録が自らのものであることを認めた。佐川氏はその後も、「いかんせん、それがどういうものか承知していない」(同6日の参院予算委)、「どういう方が、どういう目的でお書きになって、どういう形で回っているのか、全く承知していないのでコメントを控える」(同10日の同委)と言い募った。
職員への確認を野党議員に求められても、「いちいち指摘を職員に確認することはしていない」などと述べ、審議がしばしば止まった。参院財政金融委員長(自民党)の指示で記録の一部の確認に応じたのは3月27日。共産の大門実紀史氏からは「いちいち委員長に指示されないと財務省は答えないのか」と皮肉られた。
この間、2時間12分が費やされた。
■閣僚も「虚偽」と強弁、謝罪
官僚だけではない。
3月6日の参院予算委。「森友学園の弁護士の仕事をしていたという話がある」と民進党の福山哲郎氏に尋ねられた稲田朋美防衛相は、「学園の顧問だったことはないし、法律的な相談を受けたこともない」と言い切った。
稲田氏が学園との関係を問われたのは、雑誌の対談で教育勅語を幼稚園児に素読させる学園の教育方針を紹介していたからだ。
7日後には「森友学園訴訟代理人弁護士 稲田朋美」と書かれた資料を別の民進議員に示され、「答弁と違うのではないか」と迫られた。だが、稲田氏は「(学園理事長の)裁判を行ったことも、相談を受けたこともない」「(理事長)夫妻が『私に法律相談をして頂いた』とか『顧問をやって頂いた』とか(言うのは)全くの虚偽だ」と述べ、学園との関係を否定した。
ところが、稲田氏が学園の訴訟代理人として出廷していたことを示す裁判資料の存在を共同通信が報道。同14日の参院予算委で「私の記憶違いだった」と謝罪に追い込まれた。
弁明を含めて1時間7分が費やされた。
■事実確認を軽視、加計も同様
事実確認を軽視する政府の姿勢は、安倍晋三首相の友人が理事長を務める加計学園の問題にも通じる。
政府は「総理のご意向」などと書かれた文書の存在を事務方トップだった前川喜平・前文部科学事務次官が証言した後もなお、「確認できない」と言い続け、今月9日に一転、文書調査のやり直しにかじを切るまで約半月かかった。首相自身が野党議員に対して、「印象操作」「問題があるという方が立証するのが当然だ」と繰り返している。
18日に国会会期末が迫るなか、野党は早期の結果公表と前川氏の証人喚問を求めている。しかし、政府・与党は「(証人喚問は文書調査の)結果が出てから検討することになる。前川氏の話との整合性に明らかに問題がないのなら(喚問は)必要ない」(10日、自民の下村博文幹事長代行)と消極的だ。(南彰、三輪さち子)