ラップのテンポでシュプレヒコールをするデモの参加者=14日午後11時1分、東京・永田町、角野貴之撮影
多くの懸念が出され、賛否が割れる法案を、法務委員会での審議を打ち切ってまで成立させてしまうのか。「共謀罪」法案を巡る与野党の攻防が参議院で続いた14日。国会周辺で、全国各地で、人々は深夜まで抗議の声を上げ続けた。
特集:「共謀罪」
14日午後8時過ぎ、参院本会議。法務委員会での「共謀罪」法案の審議打ち切りを決める「中間報告」動議の採決が始まった。
名前を呼ばれた議員が順番に、議長席前の演台まで歩き、票を投じていく。約10分後、伊達忠一議長が投票結果を読み上げ、宣言した。「本動議は可決されました」
与党議員の拍手に、野党議員のやじが交錯する。「議長、まったく説明がないじゃないか」「参院なんかなくなりますよ」「議長は与党と官邸の下請けか」
国会会期末を控え、与党はこの日、「共謀罪」法案を本会議で直接採決する異例の「中間報告」を野党側に提案。野党側は対抗措置として、金田勝年法相の問責決議案を出し、午後6時半過ぎに参院本会議で、その趣旨説明が始まった。
「我が国の民主主義の歴史に惨禍を残す」「なぜ強引に(『共謀罪』)法案を成立させようとするのか」「審議は尽くされていない」――。福山哲郎議員(民進)や山添拓議員(共産)ら野党議員が決議案の提案理由を説明しつつ、政府の国会運営について、時に声を荒らげて批判する。
法案成立を急ぐ政府の姿は、プライバシー権に関する国連の特別報告者ジョセフ・カナタチ氏からも批判を浴びていた。
だが、伊達議長は淡々と、「時間がありません」「早くしてください」。何度も演説の打ち切りを促した。午後8時、問責決議案が否決されると、与党議員から一斉に拍手が起きた。
「中間報告」の動議が採決された後、仁比聡平議員(共産)は議場の外で言った。「委員会から審議を取り上げるという前代未聞の国会だ。審議をするのが国会議員の本来の姿なのに、国会を壊して『中間報告』に向かう。こんな本会議は国会とは言えない」(小林孝也、根津弥)
■「民主主義の崩壊だ」
国会周辺にはこの日、夕方から人が集まり始めた。「共謀罪NO!」「テロ対策とウソつくな」といったメッセージを掲げ、抗議の声を上げた。
千葉県市川市の小田喜代八さん(72)は「共謀罪」に反対するメッセージを書いた紙を国会前の道路で静かに掲げた。福島県郡山市出身で、原発に反対するデモに参加したのをきっかけに政府に疑問を持つことが増えた。「与党は自分たちの都合の良いことばかりで議論はめちゃくちゃだった。今までで一番ひどい」
劇団に所属する仙石貴久江さん(27)は、沖縄戦をテーマにした演劇の稽古をするうち、仲間と「共謀罪」の話をするようになったという。「政府の方針に反対したらアウトになりそうな雰囲気。法律ができれば、こうした劇もしづらくなるのでは」と話した。
ただ、声を上げる人たちは、次第に減っていった。横浜市のパート女性(57)は、自身も参加した安全保障法制反対のデモに比べ、この日の参加者が圧倒的に少なく感じた。「国民が政治に無関心では民主主義は崩壊してしまう」と話した。
東京・有楽町。駅前では午後6…