「AKB総選挙」の準備が進められていた豊崎美らSUNビーチ=15日、沖縄県豊見城市、佐々木洋輔撮影
沖縄県豊見城(とみぐすく)市で17日に予定されていた「AKB48選抜総選挙」が、雷雨予報で屋外開催が中止になった。主催団体が16日発表した。沖縄入りしたファンは肩を落とし、満室状態のホテルではキャンセルが相次いだ。代わりに無観客の「開票イベント」が市内の公民館で開かれる。
16日夕の那覇空港。前日に沖縄入りした愛知県の介護福祉士の男性(57)は「宿も飛行機もキャンセルできないので、集まって盛り上がろうと思いまして」と仲間の到着を待った。指原莉乃さんのファン同士で集まるという。予定では20人ほどだったが、「半分以下になりそう」。17日は「開票所」に入れないため、「今夜のうちにテレビを見られる居酒屋を探す」と話す。
イベントが予定されていた「豊崎美(ちゅ)らSUNビーチ」近くのリゾートホテルでは中止発表後、「16、17日は20件キャンセルが出た」と担当者。キャンセル料は当日80%、前日20%だが、ネット予約で未払いの客から「実際に取ることはできない」と戸惑う。一方で「団体客や(AKB)スタッフの予約も多いので、大きな影響はない」。
那覇市にある全国チェーンのビジネスホテルは直前まで満室だったが、空き室が出た。予約のタイミングにもよるが、「前日までは少なくとも1万円は超えていた」(担当者)という代金は安い部屋で1泊8千円台になっていた。
総選挙の開催が発表されたのは3月20日。主催団体は2万人規模の来場者を予想。直後からホテルへの予約が殺到し、那覇市中心部のシティーホテルは、週末で通常1万円程度が3万円超に高騰。3月中にはゲストハウスや高級ホテルを除きほぼ満室になったが、中止の発表で、宿泊予約サイト「ブッキング・ドットコム」の那覇市の予約率は5割程度まで落ち込んだ。
飲食店も「特需」に期待していた。那覇市の歓楽街・松山の居酒屋「かりん」料理長の亀浜博文さん(41)は「AKBにあれだけのお金をつぎ込む人たちですから、夜遊びにも湯水のごとく使ってくれると期待していた。土産店も含め、那覇の観光業には打撃です」。がっかりした表情を浮かべた。
ただ沖縄観光への影響は少ないと関係者はみる。
沖縄観光コンベンションビューローによると、中止発表の前から6月の来客予想は前年より「若干プラス」程度だった。外国人客の増加で、梅雨時ながら「5年前の8月並みの来客がある」と担当者。イベントがなくてもホテルの稼働率は高かったという。キャンセル料が高額な格安ツアーや航空券の利用者は「中止でも来てくれる人は多いのでは」と話す。(佐々木洋輔、滝沢文那、吉田拓史)