ソフトバンクグループの孫正義氏
ソフトバンクグループが21日に東京都内で開いた株主総会で、昨年9月に約3兆3千億円で買収した英半導体大手アームホールディングスについて、社外取締役の永守重信・日本電産会長兼社長が「私なら3千億円しか出さない」と異論を唱えた。ともに企業買収の経験が豊富な永守氏と孫正義社長の意見が食い違った形だ。
永守氏は、買収をめぐり、取締役会でも異論を述べた。「孫さんのやることは何でも間違いないということでは、大きな穴ができる。違った意見で目利きする社外役員が一人や二人いないと」と説明。最終的には賛成したという。
孫氏は「非常に健全な取締役会をしている。いろんな意見があって当然と思う」と苦笑い。一方で、「実際に買ってみると、外から見るより素晴らしい会社だ」と自身の判断の正しさも強調した。
1年前の株主総会で孫氏は60歳を機に社長を退くとしていた方針を翻し、後継指名していたニケシュ・アローラ副社長が退任した。孫氏は21日の総会で新たな後継者像に触れ、「グループで5年や10年、重要な経営の役割を一緒に担った人物」と説明。「これから10年かけて、十分に気心が知れ、能力的、人格的に優れた人物を選ぶ」とした。
株主から、同社が注力する人工知能(AI)は後継候補になるかを問われると「人間の集団を率いるので、生身の人間になってほしい」。アローラ氏に88億円の退職費用を支払ったことについては「払う必要のない退職金だったかもしれないが、代わりに私が社長に戻ってきたという価値がある」と述べ、理解を求めた。同社は孫氏が21日付で会長を兼ねると発表した。(徳島慎也)