東京電力福島第一原発事故で、町全域に避難指示が出ている福島県大熊町の渡辺利綱町長は21日、2018年中に一部地域の町民の帰還をめざす考えを明らかにした。朝日新聞の取材に「放射線量が低くなり、住める環境が整いつつある」と述べた。帰還が実現すれば、第一原発が立地する大熊、双葉両町では初めて。
帰還の対象は、第一原発から約10キロ離れた「居住制限区域」の大川原地区(5月末時点131世帯364人)と、「避難指示解除準備区域」の中屋敷地区(同11世帯22人)。全町民の3・6%にあたる。大川原地区には東電の単身寮があり、昨夏以降、第一原発の廃炉に携わる社員約750人が特例的に暮らしている。
町は帰還に向けた課題を洗い出すため、住民が自宅に寝泊まりする「準備宿泊」を今秋にも始め、避難指示が解除されるまで続けることを検討している。今後、渡辺町長が国や町議会に方針を説明するという。
放射線量が高く、対象外となる「帰還困難区域」の一部については、国が「特定復興拠点」として集中的に除染し、22年までに人が住めるようにする方針だ。(池田拓哉)