監督からの指示を破るのは「あり」?「なし」?
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野球とサインは切っても切れない関係にある。アウト数やボールカウント、走者の有無、相手の力や調子――。監督は状況に応じて指示を送り、選手が実行する。ただ状況によっては、選手が自身の判断で指示に従わないこともある。
「教育の一環」とされる高校野球で、指示破りは「あり」か、「なし」か。埼玉大会に参加する監督や主将にアンケートしたところ、サインについて高校野球ならではの様々な考え方があることがわかった。
「指示破り」に「あり」と答えた監督は60人(41%)、「なし」は76人(52%)だった。一方、主将への同じ質問では「あり」40人(25%)、「なし」115人(73%)。選手たちの方が、監督の指示に忠実であろうとしていることがうかがえる。
浦和実(さいたま市)の倉山一樹主将(3年)もその一人。「監督の教えを実践することが大事」という。バントのサインで、甘い球が来たらどうする? そう聞くと「逆に『ラッキー』と思うくらいの気持ちでバントする」と笑った。
■「あり」と答えた監督は
6月中旬、さいたま市内での練習試合。蕨(蕨市)の選手は、打席に入ってもベンチを見てサインを確認することはなかった。
「私の指示をうのみにするようじゃ、試合には勝てない」。そう話す黒須清人監督(57)も、じっと選手を見つめるだけだ。
チームは選手がベンチに頼らない「自立した野球」を目指している。決まり事はあるが、実際にプレーするのは選手たち。「自分たちで考えてプレーする習慣を」と、日頃から練習メニューを考えさせるなど、自主性を重んじる。それが将来、社会人として生きていく上でも重要な能力になると信じているからだ。
自立を促す野球に、エースの小長由侑(ゆう)君(3年)も「攻め方から自分たちで考えられるので、野球が楽しい」と話す。
「人を育てることが勝利への近道」と黒須監督。自身の想像を超えたプレーを、選手に期待している。
■「なし」と答えた監督は
「(サインが出れば)まずはそれを完遂してこいということ」。聖望学園(飯能市)の岡本幹成(みきしげ)監督(56)は、指示が守られなければ独りよがりなプレーになり、チームとして機能しなくなると考える。
ただ、その上で「状況に合った個人の判断も必要」。例えば送りバントで、一塁手と三塁手が一気に前に出てきたら――。「バスターに切り替えて打つのはいい。ただ、フライは絶対にだめ」。バントの「延長」としてゴロを打つ自信があるのであれば「指示を破ったとはならない」。指示の狙いを理解しているなら、狙いを達するために別の判断を選ぶのは「あり」ということだ。
■その他の意見(いずれも監督)
【あり】
・選手が打席で感じ、判断したことであれば納得
・理由や根拠がしっかりしていれば、むしろ奨励している
・選手には思いっきり自分の思うとおりにプレーさせてあげたい
・自分たちで判断できるチームの方が成熟している
【なし】
・チームをまとめるのは監督。選手は監督を信じて行動する
・結果論では経験にならない
・監督、選手間の信頼関係を大事にしないのは、高校野球ではない
・勝利は選手のおかげ、負けは監督の責任。負けの原因が選手にいかないよう、指示には従ってほしい