打撃練習に取り組む仙台育英の尾崎(右)と西巻
「雲の上の存在、みたいになっちゃいましたね」。仙台育英(宮城)の尾崎拓海は苦笑する。早稲田実の清宮幸太郎とは中学時代、東京の調布シニアで中軸を組んだ仲だ。
早実・清宮、打撃練習は快音少なめ 主眼は「引き出し」
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昨秋、4番打者兼正捕手として東北大会で優勝し、明治神宮大会に出場した。東京代表だった早稲田実との対戦はならなかったが、「清宮と実力はそんなに離れているとは思わなかった」。暗転したのは、今年1月のことだ。
キャッチボール中、球が左目を直撃した。眼窩底(がんかてい)骨折と診断され、視力は急に落ちた。選抜大会は代打で1打席のみ。三振だった。春の県大会は先発マスクをかぶる試合が減り、東北大会は背番号が2桁に。その間、清宮は高校通算本塁打数を3桁に乗せた。
尾崎は今、正捕手争いのまっただ中にいる。左目は万全ではなく、以前のように清宮をライバル視できなくなった。それでも、「捕手として、抑えたい」と気持ちを奮い立たせる。
主将の西巻賢二も清宮を意識する。1年生だった第97回大会の準決勝で対戦。清宮は3番一塁で先発し、西巻も二塁の守備で途中出場した。試合は勝ったが、「清宮は堂々とプレーして結果を残していた。すごいとしか思わなかった」。
この春、各校の主将が集う選抜抽選会の前日、清宮と同部屋に1泊した。「早実は勉強も大変だと話していた。しゃべってみると、同じ高校生ですね」。特別感は薄らいだ。「野球は打つだけじゃない。総合力では負けない」
1回戦で逆転負けした選抜以降、「終盤の強さ」がチームのテーマ。東北大会は準決勝で九回に逆転するなど成果を見せて優勝した。夏の目標は、2年前あと一歩届かなかった東北勢初の全国制覇。2人は「清宮は壁になる」と口をそろえる。だが、「乗り越えられる」とも思っている。(小俣勇貴)