東京電力福島第一原発の事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元同社会長、勝俣恒久被告(77)ら3人が、30日に東京地裁で開かれる初公判でいずれも起訴内容を否認する方針であることが関係者への取材でわかった。ともに「津波の襲来を具体的に予見できなかった」などと主張する見通し。
東電元幹部は津波を予見できたか 強制起訴30日初公判
ほかに強制起訴されたのは、いずれも同社の原子力部門トップだった元副社長の武黒一郎被告(71)と武藤栄被告(67)。起訴状によると、3人は原発の敷地を超える高さの津波が襲来し原発事故が起きる可能性を予見できたのに安全対策を怠り、2011年3月の東日本大震災に伴う原発事故で近くの双葉病院(福島県大熊町)の入院患者ら44人を死亡させたとされる。
裁判は、3人が津波を予見できたか、対策をとっていれば事故が防げたかが争点。検察官役の指定弁護士は、東電が08年3月に最大15・7メートルの津波を想定した計算をしていたことに着目。これをもとに3人が対策を講じれば事故は防げたと主張する見通し。
一方、勝俣元会長は初公判で、この計算について報告を受けていないと主張する方針。仮に防潮堤建設などの対策工事をしていても原発事故は防げなかったと訴える見通しだ。武黒、武藤両元副社長も津波は予見できなかったとして、いずれも起訴内容を否認するとみられる。
勝俣元会長は08年に同社社長から会長になり、事故後の国会事故調査委員会の聴取でも、「(計算)結果の報告を受けていない」と証言した。武黒、武藤両元副社長は08年当時、原発担当の原子力・立地本部で本部長と副本部長を務め、ともに計算の報告を受けたことは事故調に認めている。