事故4日後に撮影されたバス。壊れ方が衝撃の大きさを物語っている(2016年1月19日、「事業用自動車事故調査委員会」提供)
長野県で昨年1月、乗客乗員15人が死亡したスキーバス事故で、国の事業用自動車事故調査委員会は5日、報告書を公表した。バスを運行した「イーエスピー」(東京都羽村市)が運転手の十分な教育をせず、安全軽視の経営が事故につながったと指摘した。
事故は昨年1月15日未明、軽井沢町の国道で起きた。長い上り坂が終わり、下りに入って約1キロの地点でバスが対向車線を横切り、右側のガードレールを倒して崖を約4メートル転落。大学生13人と運転手2人が死亡し、26人がけがをした。
報告書によると、バスは法定の50キロを大きく超える約95キロで下り坂を走行しカーブを曲がりきれなかった。ギアはニュートラルか5速以上に入り、エンジンブレーキが利かない状態だった。運転手は必要な場所でフットブレーキを十分に使わず、ハンドル中心の操作を続け、速度が上がりすぎたとみられる。
イーエスピーは、事故の16日前に運転手を採用したが、法令で義務づけられている適性診断を受けさせていなかった。運転手は同僚に「大型バスの運転は5年ぐらいブランクがあり慣れていない」と打ち明けていたが、同社は十分な教育や技能確認をしなかった。
運転手は事故の約1カ月前、以前勤めていた別のバス会社で適性診断を受け、「突発的な出来事への処置を間違えやすい」「反応が遅れがち」と指摘されていた。この会社の代表者は「大型バスの運転技術に乏しく無理だと感じていた」と証言したという。
報告書は、イーエスピーが運転手の適性を把握し、十分な教育を行っていれば事故を防げた可能性があると指摘した。
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