プールへの飛び込み方
水泳の季節。学校で相次ぐプールでの飛び込み事故をどう防ぐか。
6月11日朝9時過ぎ。東京都江東区の辰巳国際水泳場で東京都高校春季水泳大会の競技に先立ち、参加選手、指導者約2500人に向け、安全対策に関する映像が流された。
スタート時の飛び込みでプールの底に頭を打ったことによる脊髄(せきずい)損傷が多く発生▽入水角度が水平から30度以上になると頭は水深1メートルに達することから、「前方に飛び出すことで入水角度を下げる」ことが重要――。イラストや動画でそんな説明がなされ、「一生、車いすの生活になります。自分の人生が変わるだけでなく、家族や周囲への負担も大きくなります」という言葉が流れた。
日本スポーツ振興センターによると、2005~15年の間に、小中高校の授業や部活動での飛び込みで後遺症が残った事故は約30件発生した。昨年も、東京都立高の3年男子生徒が水泳授業中に首を骨折したほか、鳥取県の小学校で6年の女子児童が放課後の水泳の課外授業で、頸髄(けいずい)損傷のけがを負った。
東京都高校体育連盟水泳専門部の井口成明さんが昨年、名古屋大大学院の内田良准教授と共同で、東京都の中高の水泳部員約2千人に調査したところ、35%が「体の一部をプールの底に打ったことがある」、10%が「頭や顔を打ったことがある」と答えた。
指導上の対策として、井口さんは「前方に飛び出せ」という声かけを強調する。入水角度は水平に近づき、頭から底に落ちる危険が小さくなるからだ。入水後に手首を返して指を上に向け、自然と体を浮かせる技術習得も大事だという。
目標物を使うのは危険という。東京の事故は、高さ約1メートルのところに構えたデッキブラシを越えるよう指示していた。鳥取の事故でも、水中のフラフープに向かって飛び込むよう教えていた。井口さんは「いずれも落下角度が垂直に近づくだけでなく、目標物に視線が集中し、危険の感知能力が下がる」と説明する。