中条あやみさん=篠田英美撮影
憧れの甲子園を目指して、熱戦を繰り広げる夏がやってきた。「じぶん史上、最高の夏」を追い求めて全力を尽くす球児たちへ、モデルや女優として活躍する中条あやみさん(20)からエールが届いた。
高校野球の試合は、球場で直接見たことはないのですが、テレビで家族とよく見ます。それぞれの学校にドラマがあって、どの選手にも熱い思いがあって。本当は全校勝ってほしいけど、そうはいかない。私も中学校でバドミントン部だったので、自分と重ねて見てしまいます。
特に思い出すのは最後の試合です。大阪府大会の出場を目指し、シングルスの個人戦に臨みました。同点が続く接戦で最後は体がクタクタ。手の汗でラケットが滑って飛んでしまって負けました。すごく悔しかったけど、「やりきった」という気持ちもありました。
練習は厳しく、ハードでした。校内をずっと走ったり、ラケットをひたすら振り続けたり。毎日同じことの繰り返しでした。私は先生から「協調性がない」と言われて、ずっとシングルス(笑)。孤独に感じて何度もやめようと思いました。でも、「ここでやめたら達成したものがない」と思って頑張りました。
競争が激しくてなかなか大会には出られませんでした。みんなが試合をしている間、私は貴重品管理。同じ立場の子と「いいな」「私の方がうまいし」と話していましたね(笑)。そんな悔しさをバネに練習して、学校内での対戦ランキングを上げました。
練習で自分を追い込まないとレベルアップできない。汗と涙を流し、それでも勝ち負けが決められる。それって大切だと思うんです。「負けて悔しい」と思わないと上にはいけない。お仕事も同じで、悔しさがあるからこそ目標を上げられる。一緒に戦う仲間も大事で、一人ひとりがレベルアップしないとチーム全体が強くなれないですよね。
その先頭に立つリーダーは大変だったんだろうなって。映画「チア☆ダン」でチアダンス部の部長役を務めて、そう感じました。私はダンス未経験。他の共演者と一緒に5カ月ほど練習を積みました。最初はダンスがうまい子に追いつくのに必死。それだけでなく、監督から「練習でもリーダーらしくしないと、撮影現場で急にはできない」と言われて、自分に何ができるか考えました。声を出すとか、まとめるために意見を言うとか、技術だけじゃないリーダーの役目があると分かってきました。
共演者は良い意味でライバル。チアダンスはみんなで息を合わせて動きをそろえる団体競技です。全員が目に見えて上達するので、「頑張らなきゃ。負けたくない」と思いました。うまく踊れなくて、練習帰りに誰もいないところで泣いたこともあります。でも、後から聞くと、みんなも隠れて泣いていたそうです。私が落ち込んでいた時は声をかけてくれたし、練習中も「今、リーダーが話しているよ」と言って協力してくれました。(練習と撮影の)半年間で、部活の3年間を経験したようでした。
中学校や高校でしか感じられない熱い思いや仲間の存在は、宝物になると思います。努力したこと、悔しかったこと、うれしかったこと、そういう体験や感情は、ずっと自分の中に残ります。
私も男の子に生まれていたら高校球児になって青春をしたかったです。人生のすべてを野球にかけているようなプレーや男泣きをする姿をテレビで見て、それだけ熱中できることがあるのはすてきだなと思います。甲子園球場の砂には、これまでの歴史や汗や涙が染みこんでいるような気がして、神聖で憧れます。
球児のみなさんには、ただただ悔いのないように戦ってほしいです。「この仲間と過ごして良かった」と思えるように。応援しています。(構成・酒本友紀子)
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なかじょう・あやみ 1997年、大阪府出身。2011年にファッション誌「セブンティーン」の専属モデルオーディションでグランプリを受賞。12年にドラマ「黒の女教師」で女優デビューした。
今春公開された映画「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」では、ダンス未経験ながらチアダンス部の部長役を熱演した。11月に公開予定の映画「覆面系ノイズ」で、バンドのボーカルで奇跡の歌声を披露する主人公の女子高生役を務める。