レスリングの五輪金メダリスト・登坂絵莉さん=吉本美奈子撮影
47チームが出場する第99回全国高校野球選手権富山大会が開幕した。リオデジャネイロ五輪レスリング女子48キロ級金メダリストで、2020年の東京五輪に向けて練習に励む登坂絵莉選手(23)=高岡市出身、東新住建=に、大舞台で力を発揮する方法や球児へのメッセージを聞いた。
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―どうしてレスリングを始めたのですか
小学3年の時、元レスリング選手の父が兄に習わせようと道場に連れて行くのに私もついて行きました。兄は嫌がったのですが、私が「やりたい」と言いました。マット運動が楽しそうだったので。中学3年で、全国中学生レスリング選手権大会で優勝できました。
―レスリングの名門・至学館高に進みます
午前5時半から朝練があり、授業の後に午後5時からまた練習です。高校から道場へは電車で1時間ほどかかるので、午後3時40分に授業が終わると、練習に間に合わせるため、駅への移動はレースみたいにみんなダッシュです(笑)。
でも、3年間やったらやめようと思っていました。全中チャンピオンのプライドをもって進学したけれど、一緒に練習する大学生や社会人との差がすごく「あ、これ私にはちょっと無理だな」と感じました。
―それでもレスリングを続けましたね
結果は出なくても、「変わったな」と家族に感じてほしかった。高校3年の時には、父から「進路は絵莉の好きなようにしてください。それではケガに注意して、毎日誰よりも努力して、絵莉が一番になれる日を願っています」とのメールが来ました。父と一緒にレスリングをしてきたことを思い出して、「もうちょっと頑張ってみようかな」と思ったんです。
―リオへ向かう前、「絶対金メダルをとる」と宣言したのが印象的でした
「とりたい」ではなくて「とる」と断定的な言葉で宣言することで、逃げられない状況を作りました。自信はなかったですが、だからこそ練習も精いっぱい取り組みました。
―どうすれば大舞台で全力を出し切れますか
一番大切なのは「何があっても勝つ」という気持ちの強さ。けがをしていても風邪を引いていてもです。全力を出し切ってダメだったら仕方ないけれど、どんな状況でも勝つために必要なのは、「絶対」という思いの強さです。
五輪の決勝でリードされて、「あれ、このまま負けちゃうのかな」という思いもよぎりました。でも「絶対勝つ」という気持ちは消えませんでした。「最後まで諦めない」と言うのは簡単だけど、どこかで諦めてしまうことってあると思います。でも、本当に最後まで「絶対勝つ」という思いがあれば、そのために必要なことができるはずです。
―「絶対勝つ」と思い続けられるのはなぜですか
一番大きいのは家族の存在です。自分の夢が家族の夢で、家族の夢が自分の夢で、勝って喜ぶ姿を見せることがみんなの幸せだと思っていました。
―野球をしたり、見たりすることはありますか
小学生の時からテレビで甲子園を見ていました。レスリング教室のマットの上で野球の遊びをしたり、野球のテレビゲームもしていました。野球は好きです!
―様々な思いを胸に開幕を迎える高校球児にメッセージをお願いします
高校野球は青春感満載!甲子園は、野球をやっている誰もが憧れる舞台で、3年生にとっては最後の夏。目標に向かって決して諦めず、全ての力を出し切って頑張ってください。(聞き手・吉田真梨)
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とうさか・えり 1993年生まれ。中学まで高岡市で過ごし、レスリングの名門・至学館高(愛知県)に進学。至学館大を経て、現在は同大院に在籍。2013年から世界選手権3連覇。昨年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得し、県民栄誉賞を受賞。