群馬大会でスローカーブを駆使した高崎の渡辺=上毛新聞敷島、篠原あゆみ撮影
(16日、高校野球群馬大会 利根実4―1高崎)
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スポーツノンフィクションの名作として知られる故・山際淳司氏の「スローカーブを、もう一球」。1981年に選抜大会へ初出場した群馬・高崎のエース川端俊介投手が主人公だが、その後輩が16日、超スローカーブを武器に群馬大会に登場した。
高崎の背番号1を背負う、渡辺宣友投手(3年)。右の下手から放たれた球は、山なりに少し上がり、打者の手元でゆるやかな曲線を描いて落ちていく。これが、得意のスローカーブだ。
身長168センチ、直球は120キロほど。直球で真っ向勝負するのは厳しいが、スローカーブを交えて緩急をつけ、打者のタイミングをはずす。なかなか公式戦でベンチ入りができなかった渡辺だが、この球種を覚え、春の大会はエースで登板した。
きっかけは、昨春の健大高崎との練習試合だった。どんな球を投げても外野まで飛ばされた。「だったらすごい遅い球を投げたらどうかな」と、試しに投げてみると、空振りさせたり、飛球に打ち取ったりできた。遅い球を磨こうと決めた。
境原尚樹監督からも「身体能力が高くなくても、球が速くなくても、三振がとれる」と勧められた。他の球種と同じフォームで遅い球を投げられるように練習した。秋には、球速計では測れないほどのスローカーブを完成させ、冬には横手から下手投げに変えた。
毎日150球ほど、多いときで260球投げ込んだ。スローカーブの制球も定まり、今春の県大会ではチームをベスト4に導いた。渡辺のスローカーブは、山際氏の著作をほうふつとさせた。境原監督も「まさに、あれですね」と笑顔をみせた。
今大会は初戦で桐生第一を破り、この日の利根実戦。積極的にスローカーブを投げたが、制球が狂った。一回、ストライクを取りにいった直球を本塁打されるなど2点を失う。二回は80キロ台のスローカーブを投げ込み、三者凡退に抑えた。「だらだら落ちるスローカーブには合わせられていなかった」
しかし、渡辺は三回途中で降板。試合は1―4で敗れた。試合後、打たれても動じず緩い球を投げ続けた理由について、「スローカーブは(自分の)生命線だから」と答えた。=上毛新聞敷島(篠原あゆみ)