判決後、裁判所前でシュプレヒコールをする学生ら=19日午後、広島市中区、上田幸一撮影
2010年に始まった高校の授業料無償化から朝鮮学校を外した国の処分について、広島市東区の朝鮮学校の当時の生徒らが取り消しなどを求めた裁判の判決が19日、広島地裁であった。小西洋裁判長は「朝鮮学校が高校無償化法の要件に該当しないことを理由とした処分で、適法だ」として、訴えを却下した。原告側は控訴する方針。
朝鮮学校の高校無償化除外、是非は 19日に初の判決
在日朝鮮・韓国籍の生徒らが通い、学校教育法上の各種学校に位置づけられている朝鮮学校の無償化をめぐる裁判は東京、大阪など計5裁判所で起こされ、判決は初めて。訴えたのは、学校法人「広島朝鮮学園」と、同学園が運営する広島朝鮮高級学校の10年当時の生徒ら計109人。約5100万円の国家賠償も求めていたが、判決はこれも棄却した。
判決は、広島朝鮮学園が法令に基づき学校が運営されているかといった無償化の要件を備えているかどうかを検討する上で、朝鮮総連との関係に着目。過去の報道などを踏まえると、総連による強力な指導が見直されたとはみえないと指摘し、無償化に伴って学園に支給される支援金が適正に使われるかに懸念を示した。高校無償化法の趣旨に沿って対象から外した文部科学相の判断に、裁量権の逸脱は認められないと判断した。
原告側は国は朝鮮学校を無償化の対象とする省令の規定をあえて削除しており、差別的な取り扱いで憲法の平等権に反すると主張したが、判決は退けた。その上で、今回の処分は学園が高校無償化の要件に該当しないことが理由で、民族を理由としたわけではなく、合理的な区別にあたると結論づけた。(松崎敏朗)
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〈朝鮮学校〉 終戦後、在日朝鮮人の子どもたちが祖国の文化や朝鮮語などを学ぶために発足した「国語講習所」が前身。現在は学校教育法上、都道府県知事の認可を受けた「各種学校」に位置づけられている。日本の学校に準じたカリキュラムに加え、朝鮮の歴史なども学ぶ。初、中、高級部に分かれ、それぞれが小学、中学、高校にあたる。文部科学省によると、2016年5月1日現在、高級部は11校(うち1校は休校)あり、1389人が通っている。