浜田洋平研究員は摩擦試験機(右)を使い、断層内と同じ圧力をかけてバクテリアの働きを確かめた=高知県南国市の高知コア研究所
バクテリアで津波を小さくする――。南海トラフ地震の脅威に直面する高知県の研究所が、夢のような研究に取り組んでいる。バクテリアを断層に注入し、セメントのような役割を担う炭酸カルシウムを生成させ、海底の隆起を減らして津波を抑えるという。実現性は未知数だが、実験では効果が確認されており、導入の可能性を探っている。
研究するのは国立研究開発法人「海洋研究開発機構高知コア研究所」(同県南国市)の浜田洋平研究員(31)らのチーム。
海溝型の南海トラフ地震は、沈み込む海洋プレートに巻き込まれた大陸プレートが元に戻る方向にずれて発生する。その際、隆起した海底が海水を押し上げ、津波が起きる。
東日本大震災では、海溝に近い海底から深さ数キロ未満の場所で、断層の浅い部分がずれて大きな津波が襲った。このため、浜田さんらは深さ1キロ程度の部分を固めれば、滑りにくくなって津波が小さくなると発案。昨年3月から研究を始めた。
この取り組みに欠かせないのがバクテリア。粘り気が低いため断層の隙間に入れやすく、増殖して広い範囲に広がり、炭酸カルシウムの結晶を生み出す。4種類のバクテリアを岩石に付着させて比較したところ、「スポロサルシナ・ウレアエ」が最も活発に結晶を作ったという。
断層内と同じ圧力をかけた実験では、バクテリアを注入した方が動き出しにくさと滑りにくさがいずれも1割ほど増し、津波の軽減に効果が期待できることがわかった。
今後は効率良く結晶を作るバク…