今年6月に大阪市でステージに立った時の加山雄三
今年80歳を迎えた歌手、加山雄三が28日、フジロックフェスティバル(新潟県湯沢町)に登場した。フジロックの限定バンド「ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA」に、トータス松本、仲井戸麗市らと共にスペシャルゲストで出演。80歳とは思えぬエネルギッシュなステージを披露した。
松本や仲井戸らが順番にゲストで登場し、加山は最後に姿を見せた。トレードマークの赤のモズライトギターを手に、映画「パルプフィクション」でおなじみの「ミザルー」を披露。高速のトレモロピッキングを涼しい顔で弾きこなした。その後、自作のインストゥルメンタル曲「ブラック・サンド・ビーチ」でもソロギターを堂々と弾きこなし、冒頭、山奥の地で、サーフサウンドを鳴り響かせた。
フジロックは2度目の出演だ。2014年の前回は、中堅・若手と組んだロックバンド「ザ・キング・オールスターズ」のメンバーとして、中規模会場の「オレンジ・コート」で演奏。今回はゲストながら、最大4万人を収容するグリーンステージの大舞台に立った。「もう一回出たいなと思っていたら、(バンドのリーダー)池畑(潤二)君が呼んでくれた。僕の本名も同じ。縁というものだなあ」と喜びをあらわにした。
また、開演直前まで降っていた激しい雨が、加山が登場した頃にはぴたりとやんだ。「ちゃんと雨をストップさせました」と笑顔。その後、「僕の原点はロック。エルビス・プレスリーに憧れた」などと語り、プレスリーの「ブルー・ムーン」を演奏したかと思えば、ウクレレを手に「お嫁においで」を楽しく演奏。最後に350万枚を売り上げた代表曲「君といつまでも」で会場を暖かい空気で包んだ。
加山と言えば「歌謡界の人」のイメージが強いが、実は「ロックの人」だ。「今日のこの雰囲気、昔をほうふつと思い出す」とステージで語っていた通り、50年以上前、大学時代にバンドを組み、銀座のダンスホールやアメリカンスクールのパーティー、米軍横田基地などで、ロックンロールやカントリーなどを熱唱しては観客を熱狂させてきた歴史がある。
13年に宮城県の「アラバキロックフェス」に出演した時に、若手・中堅のミュージシャンと組んだロックバンドが翌年発展し、「ザ・キング・オールスターズ」が生まれた。以来、各地のフェスやライブハウスへの出演を重ね、ロック色を強めていった。今回のフジロック出演は、そんなイメージを決定づける節目のライブだと言える。
最後は、今年90歳で死去したロックンロールの父、チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」を出演者全員で披露。加山も、力強いギターソロをかき鳴らしていた。(河村能宏)