宮城・松島高の生徒(右端)の案内で観光地を回った=宮城県松島町
日本三景の一つ、宮城県の松島を観光している高校生たちに、一斉にメールが届いた。「震度7の地震が発生し、大津波特別警報発令。至急避難を」
特集:みやぎ総文2017
開催中の第41回全国高校総合文化祭「みやぎ総文」では2、3両日、ボランティア部門のフィールドワークと報告会があった。松島を巡るコースでは、避難訓練をとり入れた。東日本大震災で、土地勘のない観光客がどう避難したのか、全国から訪れた高校生たちに知ってもらうのが狙いだ。
6年前に津波に襲われた観光地のあちこちに立ち、避難場所の国宝・瑞巌寺まで誘導したのは、地元の松島高観光科の3年生たち。地域の人から実際に逃げた経路を聞き取り、訓練を重ねた。ホテルへの就職をめざす水越梨奈さん(18)は「またいつ起きるか分からない災害の時に、お客様の身を守りたい」と話す。
当時、約1万5千人の町民と、約1200人の観光客にほとんど被害はなかった。近くに山があり逃げやすい地形で、観光客の誘導を想定した避難訓練をするなど備えがあったことを説明した。
観光中の笑顔から一転、真剣に話を聞いていたのは大分県立大分西高2年の藤田ひかるさん(16)。「温泉のある大分も観光客が多い。去年の地震では慣れていなくて対応できなかったから、今日の経験を大分で伝えたい」
その後、「防災宣言」を作る課題に取り組んだ。水越さん、藤田さんの班では各地の避難訓練の話に。「抜き打ちで津波の避難訓練をして、スリッパで裏山に走っている」「原発の避難訓練」という生徒もいれば、「訓練自体ない」という学校も。
防災に何が必要かも話した。「食料や水の備え」「防災訓練をまじめに」「地域の危険を知る」などと挙がった。ある班は「臨機応変に対応して、自分の命は自分で守ろう」。各地の高校生が集うことで、地域によって起きる災害や避難方法が違う点を学べたからだ。
静岡県立吉原高校2年の遠藤綾花さん(16)は自分だけでなく、周りの人の命にも思いをはせた。「海の近くに住むいとこに、どこに避難するのか聞こうと思いました」(中林加南子)