原爆が投下され72年がたち、被爆者の高齢化が進む中、厚生労働省は被爆者に代わって体験を語り継ぐ「伝承者」に支援をする方針を決めた。被爆の実相を国内外に発信するため、英語研修や海外派遣などをする費用を来年度予算に計上する。国が伝承者事業に予算をつけるのは初めて。
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厚労省によると、被爆者は今年3月末現在で16万4621人。22年間でほぼ半減した。平均年齢は81歳を超え、自身で経験を語ることが難しくなった被爆者も増えている。
被爆体験や平和への思いを次世代に語り継いでほしい、と広島市は12年度から「被爆体験伝承者」の養成を始めた。長崎市も14年度に同様の事業を始めた。現在、計約100人が広島平和記念資料館や長崎原爆資料館などで活動している。
厚労省は来年度から、こうした伝承者への英語研修や手話研修の費用を助成する。昨年5月にオバマ前米大統領が広島を訪問した影響などで増加している、外国人観光客への対応をしてもらうことなどを想定している。海外から要望があれば、伝承者の海外への派遣も検討する。(黒田壮吉)