中京大中京の3番手で登板した伊藤稜=加藤諒撮影
(11日、高校野球 広陵10―6中京大中京)
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同点の六回1死二塁、中京大中京の伊藤稜(3年)がマウンドへ走る。同じ投手の掛布大樹(かけのだいき)と二人三脚でたどり着いた場所だ。
打撃投手を務めることが多かった1年の12月、腰を痛めた。腰椎(ようつい)分離症。いま思うと、ケア不足だった。「思い出したくもない」という激痛から、野球をやめようとも考えた。助けてくれたのが掛布だった。
彼も中学時代に腰痛に悩んだ。何十軒も治療院に通ったが治らず、原因も不明。専門書を読みあさり、治療院を探して完治させたという。「腰痛のスペシャリスト」だ。
相談したら、親身に症状を聞いてくれた。治療院やジムを紹介され、ストレッチの重要性も教わった。痛みは徐々に消え、半年で投球ができるようになった。「一緒に背番号をつけて甲子園へ」と誓い合った。プライベートも一緒にいる時間が増えた。今年の正月には一緒に自転車で愛知から三重・鳥羽を巡る約220キロの旅もした。残り40キロからは2人ともフラフラだった。
昨秋から自分は背番号11だったが、掛布はベンチを外れた。6月、ベンチ外の3年生の「引退試合」とも呼ばれる親善試合に彼が出た。好きに選べる背番号は、同じ「11」をつけてくれた。
掛布の夢は、腰痛に悩む人を減らすこと。筑波大を目指して受験勉強に集中しているから、甲子園の応援には来られなかった。
「あいつの分も」と奮い立ったマウンドで2回3分の1を投げて8安打7失点。「悔しいし、申し訳ない」。でも、全力で左腕を振れた。掛布がいなければ、この63球はなかった。(小俣勇貴)