試合後のあいさつを終え、ベンチに戻る京都成章の北山亘基君(中央)=14日、阪神甲子園球場、小林一茂撮影
(14日、高校野球 神村学園3―2京都成章)
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11奪三振のエースは敗戦後、すがすがしい表情を見せた。14日の第1試合、京都成章のエース北山亘基君(3年)は神村学園(鹿児島)相手に投げ抜いたが、2―3で惜敗した。
目標は「27K」だった。すべてのアウトを三振で取る。1年生の春、高校3年間で達成したいと、帽子のつばの裏に書いた。
実際、今春の府大会では16奪三振でノーヒットノーランを達成した。夏の京都大会では6試合のほとんどを1人で投げ、最速146キロの直球と大きく曲がるカーブで奪った三振は60。一方、与四死球は27。いずれも今大会の甲子園出場選手で最多だ。松井常夫監督(53)が「もろ刃の剣」と評したこともあった。
三振にこだわる投球は、中学時代に培われた。京都市北部の山あいの軟式野球部は、部員が少なく試合に出られない時もあった。「自分が抑えないと勝てないチーム」で、1人で抑えることにこだわった。
京都成章入学から間もなく試合に先発登板した。しかし、三振へのこだわりや自尊心の高さから、野手とぶつかることもしばしば。ピンチで捕手がマウンドに近づくと、「来んな」と突き放すこともあった。
昨夏の新チーム結成時、松井監督から「もっと周りが見える投手になるように」と主将を任された。試合中や練習中、それまでできなかったチームメートへの声かけが圧倒的に増えた。捕手の北田諒大君(3年)も「『自分が自分が』という投手ではなくなった」と話す。
それでもエースとして、三振へのこだわりは捨てなかった。この日も11の三振を奪った。四回の三つのアウトはすべて三振だ。
同点の九回裏、1死二、三塁のピンチを招く。北山君のマウンドに内野手が集まり、「楽しんで勝負しよう」と声をかけあった。投じた133球目、打ち取った当たりが内野安打となり、サヨナラ負けを喫した。
松井監督は試合後、「仲間のミスにも声をかけて前を向けるようになった。人間的成長がプレーにつながるということを教えてくれた」と語った。
北山君は「悔しいけど、皆と一緒に試合ができて楽しかった。三振も2桁取れたので良かった」と言った。帽子を脱ぐと、前の晩に書いた「感謝」という2文字がつばの裏にあった。(松本江里加)