暑くなれば、かちわり氷の売り上げも伸びる=阪神甲子園球場、高岡佐也子撮影
夏の甲子園名物の「かちわり氷」。兵庫県内の商店が砕いた氷を袋に詰め、「かちわり氷」と命名して球場内で売り出してから今年で60周年。ファンからは変わらず愛され続けている。
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第99回全国高校野球選手権大会が開かれている阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)。19日の昼過ぎ、「かちわりいかがですかー」と売り子の声が響く。この日、神戸市の最高気温は33・4度。涼を求めた観客たちが、次々にかちわり氷を買っていった。
バックネット裏で観戦した大阪市福島区の会社員前野大さん(26)は、かちわり氷を頭に押しつけ、「ふー!気持ちいい!」。子どもの頃、祖父に連れられてよく高校野球を見た。「甲子園に来たらかちわりだ」と祖父が買ってくれた思い出がある。「甲子園といえばかちわり氷。これからも、ずっと愛され続けていくと思う」
かちわり氷は1袋に約400グラムの氷が入っており、200円(税込み)。ストローも付いてくる。顔や首に押し当てたり、溶けた水を飲んだりできる。
阪神甲子園球場と、かちわり氷を販売している梶本商店(兵庫県西宮市)によると、1957年の第39回大会時、同商店が砕いた氷を袋に入れて「かちわり氷」と命名して売り出したのが、現在の甲子園名物の始まりという。それ以前にも球場内に限らず、氷を砕いた商品はあったが、かちわり氷は袋に入っており、食べるだけでなく、体に当てて涼をとりやすいことなどから人気が出た。
球場内で氷の柱を砕いてつくっていた時期もあったが、現在は冷凍庫で在庫を保管した上で販売している。売り上げを左右するのは、やはり天候だ。真昼の暑い時間帯に好カードの試合があれば売り上げは伸びる。
80年代は1日1万個以上売れる日も多かったが、2000年ごろから凍ったペットボトル飲料が登場し、次第に売り上げが低迷。球場はかちわり氷をモチーフにしたTシャツや保冷機能付きの巾着などを売り出してPRをしてきた。
近年の売り上げは順調という。球場の第1期の大規模改修が完了した08年以降で、昨夏は大会を通じた売り上げが約11万5千個で最高だった。今年から、「溶けた後の氷水も楽しんで欲しい」と、溶かして飲める粉の「スポーツドリンクスティック」(1本50円)の販売を始めた。熱中症対策にもなるので、売り上げは好調という。
球場は「長年、甲子園で愛されてきた商品。かちわりで体を冷やしつつ、熱い戦いに声援を送って欲しい」としている。(吉川喬)