一回表、マウンドの佐渡裕次郎君(左)に声をかける山上祐大君=16日、阪神甲子園球場、林敏行撮影
(16日、高校野球 花咲徳栄9―3日本航空石川)
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ワンバウンドのボールを10回以上止めた。16日の第3試合、日本航空石川の捕手、山上祐大君(3年)はエース佐渡裕次郎君(3年)の球を後ろにそらさないよう体を張った。花咲徳栄(埼玉)の強打線に変化球で攻めたが、9―3で敗れた。
山上君は相手打者が入る前、打席の土をスパイクでならしてからミットを構える。ボールを不規則にバウンドさせないためだ。
エース佐渡君は、低めの変化球で三振や打たせて取るのが持ち味。山上君はこの日も打者が代わる度に、丁寧に打席をならした。
日本航空石川の野球部員は130人。捕手は10人以上いる。1年生の時は正捕手をあきらめかけたこともあったが、昨夏の石川大会で活躍する3年生の姿をスタンドから見て、神戸市から送り出してくれた両親の顔がふと浮かんだ。
新チームが発足すると、練習中も試合中も、ベンチにいる時は中村隆監督(33)の隣に陣取った。監督の言葉を聞き逃さず、その場でノートに書き留めた。内角に1球投げれば、次の打者も意識する。そんな配球術や相手打者に向かう時の心構えをノートに記した。ベンチにいられない時は、ほかの部員に頼んで書いてもらった。
そうして書き込んだノートを、寮の部屋で何度も見直した。「ノートを作れと言っても、作らない部員もいる。山上は成長しようとしていた」と中村監督。
毎日の自主練習では、佐渡君の球を想定し、約10メートルの距離からワンバウンドのボールを投げてもらい、ボールが真下に転がるよう上半身で受け止めた。
努力が実り、昨秋に背番号2を手にした。うれしくて、すぐに携帯電話で写真を撮って両親に送った。
この日の初回、低めの変化球で抑えようとしたが、相手打線はバットを動かさずボール球となった。4四球などで5失点。二回以降は、低めの変化球を意識させつつ、真ん中にボールを集めると策がはまる。佐渡君が降板する七回までを1失点に抑えたが、初回の点差は最後まで埋められなかった。
試合後、山上君は「ノートの内容は全部頭に入っている。甲子園という場所で、出し切ったので悔いはない」と話した。寮に置いてきた土のついたノートは後輩に譲ろうと思っている。(浅沼愛)