大阪桐蔭―仙台育英 九回裏仙台育英2死一、二塁、一塁手中川は若山の遊ゴロの送球を捕球するが、一塁ベースを踏まずセーフとなる。一塁コーチ佐藤=加藤諒撮影
(19日、高校野球 仙台育英2―1大阪桐蔭)
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一塁塁審の手が横に開いている。
「何が起こったのか分からなかった」とは大阪桐蔭の投手柿木。主将で捕手の福井は「あまり覚えていません」。九回2死一、二塁。最後のピンチを遊ゴロで終えた、はずだった。
送球を受けた一塁手の中川が足でベースをまさぐる。遊撃手の泉口が二塁に投げてアウトを取る、と思ったのか。「焦って、ベースを見ずに入ってしまった」。走者のヘッドスライディングが先だった。
満塁。スタンドでは観客がタオルを回す。手拍子も起こる。背番号13の加藤が西谷監督の言葉を伝えにマウンドに来る。「こんなことはあまりない。成長できるチャンスだ」。ナインに笑顔はあった。が、選抜王者と言えど、この逆境を跳ね返すのは至難だった。
史上初となる2度目の春夏連覇へ。春以降も慢心はみじんもなかった。激しい競争。毎日の練習では福井がたびたび仲間を集め、投げる時の基本的なステップから何度も何度も確認するほどの徹底ぶりだった。
だから、厳しい戦いが続いても崩れなかった。大阪大会は準々決勝から3戦連続で逆転勝ち。打線の状態が上向かない中、甲子園でも2回戦は1点差ゲームをものにした。
そしてこの日も。福井の盗塁阻止や左翼手山本の本塁への好返球があった。八回に1点をもぎ取り、最後の最後。福井は「ショートゴロで勝ったと思った。そこが隙だった」。
試合後の中川は放心状態で、柿木は泣きじゃくった。ともに2年生。たしかに、張り詰めた空気から解放されるのがコンマ数秒、早かったのかもしれないが、責める者はいない。西谷監督が言う。
「今日の負けは、誰のせいでもない」(山口史朗)