北朝鮮による中距離弾道ミサイルの発射を受け、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は29日、強力な報復能力を示すよう指示し、韓国空軍の戦闘機が爆弾投下訓練を実施した。大統領府当局者は「ミサイルが日本列島を越えた以上、厳しく反応せざるを得ない」とした。ただ、文政権が掲げる南北対話の方針を変更する可能性は低いとの見方も出ている。
韓国軍の戦闘機、爆弾投下訓練 ミサイル発射の対抗措置
特集:北朝鮮のミサイル
29日午前、韓国空軍のF15K戦闘機4機が、東部の演習場で爆弾8発を投下する訓練を行った。韓国軍合同参謀本部は「有事の際、敵指導部を焦土化する空軍の対応能力を確認した」とコメントした。
また、韓国・国防科学研究所は同日、開発中の新型の射程500キロと同800キロの弾道ミサイル計3発を試射した映像を公開した。同研究所は500キロのミサイルについて「北の全地域の重要施設を正確に破壊できる」と説明。800キロのミサイルについて「北の核・ミサイル基地だけでなく、すべての標的を破壊できる」と主張した。
29日午前には、鄭景斗(チョンギョンドゥ)・韓国軍合同参謀本部議長とダンフォード米軍統合参謀本部議長が電話で協議。韓国側の説明によれば、米韓は北朝鮮に対して軍事的対応を含め、同盟の強力な意思を示す対応措置を早急に実施することで合意した。米軍の戦略爆撃機などの朝鮮半島派遣を検討しているとみられる。
米韓は21日から合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」を実施しているが、戦略爆撃機や原子力空母など米軍戦略資産の朝鮮半島付近への展開は確認されていなかった。
ただ、韓国の専門家の一人は文政権の南北対話路線について、「保守陣営との差別化を図るうえでの象徴。簡単に路線を変更するとは思えない」と語った。
韓国軍幹部は14日の国会答弁で、米韓両軍が現時点で「デフコン(防衛準備態勢)」の格上げを検討していないとしていた。だが、米韓が北に対して具体的な行動に出れば、朝鮮半島の緊張が極度に高まる可能性がある。(ソウル=牧野愛博)