又吉直樹さん=時津剛撮影
芥川賞受賞作『火花』は300万部を超える大ヒット、続く受賞後第1作の長編小説『劇場』もベストセラーに。最近は文化人としてスポットライトを浴びる機会が増えた又吉直樹さん(37)。だが、コントこそが「自分の大本」と語る。原点ともいえるコントライブ「さよなら、絶景雑技団」(東京・よみうりホール、9月9・10日)の再演を前に、胸のうちを聞いた。
――タイトルの「さよなら、絶景雑技団」とは?
僕には、日常の何げない風景や場面の中に、「絶景」と定義できるような面白い一瞬が潜んでいるという思いが強くあって、それを切りとって、風景や場面のあるコントとして、舞台の上で表現していきたいという発想で始めたんです。「雑技団」としているのは、旅芸人の一座のようなイメージで、舞台を見せたあと、去っていくとき、子どもたちに、「さよなら」って声をかけられるような存在でありたいと。
――2009年、11年、そして今回と、3回目の公演です。
出演者は、ほぼ変わっていません。でも、09年に初めてやった頃は、みんな20代。一人だけテレビに出始めていた後輩がいましたが、それ以外は、僕も含め、全然世に出られていない状態で。
渋谷のキャパ250人くらいの劇場で、日々、ネタをやっていましたが、「ほんまに面白いことできてんのか」と思っていた時期。この先、どうしていけばいいのかわからないような状況の中で始めたんです。
今回は、『火花』を書き上げた2年くらい前から、「2作目が終わったら、またやりたい」と、みんなに相談していたのですが。ただ、この7、8年で、状況が変わったのは僕だけでなく、メンバーの中から、(コント日本一を競う)「キングオブコント」のチャンピオンが出たり、「すべらない話」で最優秀のMVS(「モスト・バリュアブル・すべらない」の略)に選ばれたり。みんな、飛躍して、ちゃんと世に出た。「コンビやトリオの仕事を優先するなら、気にせんと断って」って言っていたら、相方の綾部(祐二さん)がニューヨークに行くことになって……。