埼玉から旅行で訪れた女子高生たち。出来たてのチーズケーキをお店の前で「あーん」=大阪市中央区、竹花徹朗撮影
■「まだまだ勝手に関西遺産」
ホールケーキが税抜き500円で買える夢のようなお菓子。それが「りくろーおじさんのチーズケーキ」だった。奈良出身の私は学生のころ、大阪・難波へ買い物に行ったときのお土産にしていた。
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「焼きたてチーズケーキ」はデンマーク産クリームチーズなどの素材にこだわり、33年間、変わらぬ味を届けてきた。原材料の高騰で1個685円(税込み)に上がったが、まとめて4~5個買う人も多い。
りくろーおじさんと言えば、ケーキの上に押された焼き印のキャラクターを思い浮かべる方も多いだろう。パティシエの格好をした、やさしそうな、ひげ面のおじさんだ。この人は一体、だれなのだろうか。
大阪府内で11の直営店「りくろーおじさんの店」を展開する「リクロー」(本部事務局・大阪市西成区)の企画部長、中村真士さん(51)にうかがってみた。焼き印のおじさんのモデルは創業者の故西村陸郎(りくろう)さん。だが、陸郎さんの写真を見ると、焼き印は実物に全然似ていない。ひげも生えていない。そう伝えると「どうせならかわいいキャラクターをと考えました」と中村さん。
陸郎さんは1933年、兵庫県の淡路島に生まれた。16歳で大阪の菓子問屋に丁稚奉公に出て、約2年後、和洋菓子店に移り、菓子づくりなどのノウハウを学んだ。56年に23歳で独立。自転車でどら焼きを売るところから始まり、66年に第1号店を大阪・岸里に構えた。
84年、新店舗オープンに合わせ、焼きたてチーズケーキが新発売された。冷たいチーズケーキが主流だったこともあり、「焼きたて」を売り文句にしても広まらなかった。だが、難波に出店すると、行列ができるように。テレビ番組でも紹介され一気に知られるようになった。
「お菓子は、やらこう(やわらかく)なかったらあかん」。陸郎さんは常々そう言っていた。2007年に亡くなった後も、その精神は引き継がれている。温かいケーキをほおばると、口の中でふわっととろける。ケーキは1度に12個が、ピーク時には5分間隔で焼き上がる。ほとんどの店舗にキッチンを併設し、ベルを鳴らして焼き上がりを知らせている。
テイクアウトしたら、その箱に…