指点字によるコミュニケーション。点字タイプライターのキーに見立てて指をたたく (C)2017 Siglo
目が見えず、耳が聞こえない。そんな盲ろう者たちの生活や思いを伝えるドキュメンタリー映画「もうろうをいきる」が、14日から大阪市内で公開される。監督の西原孝至(たかし)さん(34)に、どんな思いで撮影に臨んだのかを聞いた。
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〈映画の概要〉 全国に約1万4千人いるという盲ろう者が、家族や支援者とともに地域で暮らす日々を、丁寧にすくい取った映画。地震と津波で家を失った宮城県の男性、家事をこなし買い物にも行く宮崎県の女性など。東大教授の福島智さんもいる。悩みや葛藤はある。だがむしろカメラは、身近な人たちとコミュニケーションをとるときの笑顔に光を当てる。
■監督「たくましさ伝えたい」
――撮影のきっかけは
盲ろうの方に初めて会ったのは去年の春。映画のバリアフリー上映会でした。触(しょく)手話(手話の形を手で触って読み取る)や、指点字(指をたたいて言葉を伝える)で映画を鑑賞する姿を見て、自分の知らないコミュニケーションに驚きました。
撮影に入る直前に、(障害者施設で19人が殺害された)相模原事件が起きました。容疑者の男性は「障害者は生きていても仕方がない」と語ったといいます。事件に対し、何か反対のメッセージを打ち出せないかという思いで臨みました。
――登場する人たちの障害の程度は様々です
全く耳が聞こえず目も見えない「全盲ろう」の方もいれば、少し聞こえる、少し見える人もいる。障害の重さも、いつから見えなくなったかといった歴史も様々です。障害の幅広さを知ってもらいたかった。そのグラデーションを描こうと思いました。
――料理や洗濯、掃除をしたり…