立憲民主党公認の海江田万里氏(東京1区)を応援する民進党の蓮舫前代表=15日、東京都新宿区、中崎太郎撮影
「看板」党首が全国を駆け回って人だかりをつくり、党本部が情勢を見ながら幹部の応援を差配する。今回の衆院選では、そんな見慣れた風景に異変が起こっている。不支持層を抱える安倍晋三首相や野党第1党の分裂劇が響いているようだ。
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■自民は「二枚看板」
小泉進次郎氏は週末の14日、観光客が詰めかけている京都の名所・八坂神社近くでマイクを握った。京都2区で自民新顔とぶつかる民進党の前原誠司代表をこう皮肉った。
「前原さん。代表になったばかりですけど、一番最初にやった大仕事は、その民進党を無くすこと」
聴衆はドッと沸き、携帯電話で次々とその姿を撮影した。
党内では、小泉氏は安倍首相と並び「二枚看板」と呼ばれる。公示日に自らの選挙区に入った以外はすべて応援。北海道や東北、近畿など全国を回り、16日は九州に。安倍首相と同様、党本部の専属チームが遊説を取り仕切り、接戦区を中心に「無党派層を狙う」(党関係者)戦略だ。
小泉氏の応援は今回、自民陣営から特に重宝がられている。支持率と不支持率が競り合う安倍首相の応援よりも「敵」を集めにくいためだ。小泉氏の応援を受けた自民陣営の関係者は「首相の応援は『アンチ』の聴衆もついてくる。でも、タレント性のある小泉氏には、ヤジが起きない」と話した。
■「都知事党首」分刻みで
希望の党の小池百合子代表は名実ともに「一枚看板」だ。先月25日に結党し、代表以外の幹部はいないからだ。「リセット」を宣言して新党を立ち上げたが、立候補はせず、本業は都知事のまま。小選挙区だけでも198人いる公認候補の応援は、過密日程になる。
小池氏は13日夕、東京・渋谷の街頭に立った。知事としての定例会見などもあり、この日は都内2カ所しか回れなかった。演説ではこの状況を逆手にとって「先ほどまで(都庁の)会議に出ていました。今も都政を着実に進めている。安倍総理は全国を遊説して、閣議は今日も行いませんでした」と首相を批判した。
自身も都知事と国政政党代表という「二足のわらじ」批判を受ける危険性を抱え、選挙運動は制約を受ける。
公示から15日までの6日間で首都圏を離れたのは2日間だけ。「遠征」は日帰りで演説日程を詰め込む。東北に入った11日は5県で遊説。14日の近畿では4府県を駆け回った。4カ所目の京都市での演説を10分で終えると、約1時間後には滋賀県彦根市でマイクを握った。遊説担当者は「とにかく分刻みだ」と漏らす。
■仲間がバラバラに…
出身者が希望の党と立憲民主党、無所属に分かれて立候補することになった民進党。参院議員の蓮舫前代表はバラバラになった「同僚」の選挙区を飛び回る。
「私は、信頼できる仲間だけを応援しています」
15日午前は東京で民主党代表経験者の立憲民主党元職と街頭演説。午後には佐賀に移動し、自らの代表時代に政調会長だった希望の党前職と並んだ。
年金制度改革やカジノ解禁法を例に、安倍政権を「言っていることとやっていることがあべこべ」と鋭く批判するが、分裂騒動の説明にも時間を割き、応援先の選考は人物本位、と説明する。公示から6日間で応援した候補は希望が9人、立憲が6人、無所属が4人。なるべく集中しないよう気を使っている。
かつての仲間が陣営を分かれて争う現状に、民進党関係者はため息をつく。
「本当に異常な選挙だ」(又吉俊充、西村奈緒美、中崎太郎)