リオ五輪のカヌー・スラローム男子カナディアンシングルで銅メダルの羽根田卓也
リオデジャネイロ五輪のカヌー・スラロームで日本勢史上初の銅メダルを獲得した羽根田卓也(ミキハウス)が16日、強化拠点のスロバキアから約半年ぶりに帰国した。2020年東京五輪への再スタートとなった今季のテーマは「挑戦」だった。試行錯誤の過程で、手応えもつかんだ。
東京五輪で目標の金メダルを取るために、必要なことは何か。羽根田が出した答えは、さらなるスピード強化だった。激流の中で正確にゲートをくぐる世界屈指の安定感に加え、スピードを殺さずにこぐ技術を改めて磨こうとした。
今春から、パドルの長さを5センチ伸ばし、座る位置も8センチ前方にずらした。いずれも、より大きな推進力を得て加速するための試み。「0・5センチでも違うと、感覚が変わる」という繊細さを持つ羽根田にとって、冒険ともいえる挑戦だった。
ところが、「道具に体がついてこなかった」。パワーを制御できず、7月には左肩などを痛めた。パドルの長さを2センチ縮めるなど、微調整を重ねた。そして9月末、今季最大の目標だった世界選手権(フランス)は7位。「道具が合わなかったなかでは、ハイレベルな大会で1桁順位。ノルマは達成」と振り返った。
スピードが出てきたと感じる一方、「カヌーが体の一部になる」という感覚にはまだ遠い。今年の冬は、親交のある、陸上ハンマー投げの五輪金メダリスト、室伏広治さんから、効率の良い体の動かし方を学びたいという。
「(室伏さんから助言を受けた)桐生(祥秀)選手が100メートルで9秒台を出した。自分も室伏さんから『トレーニングにおいで』と言われているので、話を聞いてもらいたい」(前田大輔)