試合後に全員で校歌を斉唱する呉宮原の選手たち=呉二河
全力のプレーがいま、私たちにできること――。豪雨災害で甚大な被害が出て延期されていた第100回全国高校野球選手権記念広島大会が17日、始まった。全国の地方大会の中で最も遅い開幕となった。6球場で1回戦14試合があり、球児らは災害の犠牲者へ黙禱(もくとう)を捧げた後、熱戦を繰り広げた。18日は1回戦10試合がある。
過去最多700試合をライブ中継 バーチャル高校野球で全試合中継の大会も
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(17日、高校野球広島大会 呉宮原15―0音戸・大柿)
再開した仲間と「当たり前」の喜びかみしめ 呉宮原
「無事でよかった」
呉宮原の主将、藤原大輔君(3年)は試合前、迫越(さこごし)智哉君(同)に声をかけた。豪雨災害後、初めて迫越君に会えた。
6日夜、呉市安浦地区の迫越君宅と学校の間をつなぐ道路や鉄道は、土砂崩れによって断たれた。
野球部は13日に練習を再開したが、迫越君は来られなかった。自宅は7日朝、近くの川の水があふれ、床上まで泥水につかった。家族で2階に避難し、夕方にボートで救助された。その後は家の土砂の片付けに追われた。停電、断水……。「野球とか、それまで『当たり前』と思っていたものがなくなった」と思った。
主将の藤原君は、多くの人が犠牲となった天応地区で泥のかき出しボランティアに参加した。その後も「自分にできることは何だろう」と考え続けた。開幕が迫る野球。主将としていかにチームを引っ張るか。「まずはプレーだ」と、仲間と練習できない間も素振りなどの自主練習に励んだ。
初戦の相手は同じ呉地区の音戸・大柿の連合チーム。一回裏、藤原君の打球はライトフェンスに直撃し、ランニングホームランに。広島大会第1号の本塁打となった。
初勝利を収め、藤原君は「みんなでできる喜びをかみしめました」。代打、そして外野手としてグラウンドに立った迫越君も「やっぱり野球から離れたくない。この夏、思いきりやりたいです」と、チームメートを見つめていた。(新谷千布美)