「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)」の基本的な流れ
最大32万人の死者が出ると想定される「南海トラフ巨大地震」に備え、気象庁は、新たに運用を始める情報発信の概要を公表した。巨大地震との関連が疑われる現象が起きると、調査を始めた時点で臨時情報を発表する。関連が高いと評価した場合は、発生から最短2時間で警戒を呼びかける情報を出す。
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新たに発表するのは「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)」。11月1日正午から運用を始める。地震の予知は困難として、約40年ぶりに見直された大規模地震対策特別措置法(大震法)の「警戒宣言」の代替策という位置づけだ。
臨時情報は、南海トラフ地震の想定震源域で▽マグニチュード(M)7以上の地震が発生▽M6以上または震度5弱以上の地震が発生し、岩盤の動きを捉える「ひずみ計」が変化を観測▽ひずみ計が有意な変化を観測――などの場合に調査を始め、まずは1回目を発表。その後、地震学者らによる検討会が分析に入り、発生から約2時間をめどに2回目を発表し、巨大地震が起きる可能性が高いかどうか、検討結果を伝える。
高いと評価された場合は、「○○の領域では1週間程度、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられる」などの表現で公表される。家具の固定など防災上の留意点も示す予定だ。現象の新しい変化を観測したり、巨大地震の可能性が高くないことが分かった時点でも随時発表する。
同庁はホームページや都府県を通じて市区町村や住民に周知する。今回の情報に大震法の警戒宣言ほどの強制力はないため、発表された際の対応は、住民や各自治体が判断することになる。逃げるのか、いつまで避難するのか、混乱が広がる可能性がある。
国は今後、南海トラフ全域で、各自治体の実情に沿った防災計画を策定する。すでに静岡県や高知県をモデル地区に指定して議論を進めており、防災計画の作成に役立てる方針だ。(山本孝興)