岩礁周辺に群れをなすソラスズメダイ=9日、鳥取県岩美町、田中泰子撮影
秋の鳥取の海に、今年も鮮やかなコバルトブルーのソラスズメダイがやってきた。沖縄など南の海で生まれた幼魚が、海流に乗ってこの時期に現れる。12月までは見られるという。
10月上旬、鳥取県岩美町の浦富海岸でウェットスーツを着て潜ると、海底にソラスズメダイの群れを見つけた。体長は3、4センチ。ほかに背中が黄色でしま模様のオヤビッチャもいた。10月に入ると気温は下がるが、水温は20度前後だ。
山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館(同町)の学芸員太田悠造さん(33)によると、夏の鳥取の海では、ソラスズメダイはほとんど見られないという。春ごろに沖縄などの暖かい海で生まれた幼魚の一部が暖流の対馬海流に乗って秋ごろに日本海にやってくる。岸の近くから水深20メートルほどの岩場にかけて生息するという。
成長すれば体長7、8センチほどになるが、鳥取で確認されるのは幼魚がほとんど。太田さんは「年間を通して完全にいない時期があり、ここで繁殖しているとは考えにくい」。1月以降は見られなくなる。「死滅回遊魚」と呼ばれ、冬を越せずに死ぬとみられる。
魚の生態に詳しいマリンワールド海の中道(福岡市)学芸員の岡村峻佑さん(35)によると、海流に乗ったソラスズメダイは日本海側では新潟、太平洋側では千葉あたりまで北上するという。過去には青森でも見つかっているという。「冬を越せず死んでしまうので学術的には『無効分散』と言います。潮の流れが重要なので、今年は『黒潮大蛇行』のため太平洋側の普段見られるエリアで見られないなどの影響が出ているそうです」と話す。(波絵理子、田中泰子)