1994年の日本シリーズ第2戦に登板した工藤公康
第1戦が一方的な展開になった日本シリーズとして、印象に残るカードがある。
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1994年、西武と巨人の戦いだ。当時の西武は黄金期。森監督のもと、5年連続でパ・リーグ覇者としてシリーズへ進出してきた。一方、長嶋監督が率いる巨人は、中日との優勝争いが最終戦までもつれ、球史に残る「10・8決戦」に勝っての進出だった。
西武優位との前評判通り、第1戦は西武が11―0で巨人を圧倒した。巨人のエース桑田が、西武の4番清原に本塁打を浴びるなど崩れた。この時点でファンの間には「西武の4連勝かも」という雰囲気があふれていた。
しかし、第2戦で流れが一変した。槙原が西武打線を完封し、巨人が1―0で勝利。勢いに乗った巨人は4勝2敗でシリーズを制したのだ。
実は、第1戦の桑田には「あらゆる球種、コースを使ってデータを集めろ」という指示が出されていた。捕手の村田真は収集したデータから西武打線の弱点を探り、第2戦以降に生かした。日本シリーズには「第2戦重視主義」という言葉があるが、94年はまさにこのケース。日本シリーズは三つ負けられる。その負けで何を得るかが、短期決戦の行方を決める要因にもなる。
過去の日本シリーズで、先に負けて第2戦に勝ったチームが日本一になったのは16度。逆に2戦目に負けて1勝1敗に並ばれたチームの優勝回数も16度。つまり、DeNAが第2戦を取れば、データ的には互角となる。一方、連勝スタートしたチームの優勝は26回。連敗スタートからの逆転優勝は9度だから、一気に形勢が傾く(いずれも引き分けを除外)。シリーズの行方を占う上で、この第2戦は重要ということになる。
圧倒的な戦力でパ・リーグを制したソフトバンクと、「下克上」で進出してきたDeNA。第1戦を終えた時の空気感は、94年のシリーズとどことなく似ている。
ただ、ソフトバンクには、最後まで気を緩めるはずのない人物がいる。94年の第2戦で、西武の先発投手として槙原と投げ合ったのが現ソフトバンクの工藤監督なのだ。指揮官はきっと、23年前の再現だけは全力で阻止してくるはずだ。(吉村良二)