自動運転に必要な技術を展示する日立オートモティブシステムズ=東京都江東区の東京ビッグサイト
27日、開幕した東京モーターショーで、メーカー各社がアピールに力を入れているのは、自動運転の技術だ。近い将来、自動運転車などの普及で道路や街の姿はどう変わるのか――。そんな将来像について、20~30代の若者が来場者と話し合うイベントが、会期中の11月3日に開かれる。
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政府は2020年の東京五輪・パラリンピックまでに、無人自動走行の実用化を目標に掲げている。現在、高速道路でのトラックの隊列走行や過疎地での移動支援など各地で実証実験が進められている。
自動運転を推進する内閣府の研究開発プログラムの委員で、モータージャーナリストの清水和夫さんは「実用化に向けた技術開発は進んでいるのに、どうすれば自動運転が世の中に受け入れられるか、対話が進んでいない」と話す。そこで、大学生らを招き、来場者と意見を交わす対話集会を企画した。
登壇予定の東京大職員・田中和哉さん(31)は「街づくりは行政が中心となって画一的に作られてきた。しかし、これからは多様なニーズに応えられる街に変わるべきだ」と話す。
きっかけは、夏に行った香川県の小豆島だ。住民から「運転代行業者が事業をやめてしまい、居酒屋で飲めない」という話を聞いた。自宅まで30分歩いて帰る人もいるが、来店客は減ったという。「自宅まで送ってくれる自動運転はどうだろう」と提案すると好反応だった。
島の生活道路は狭いが、歩行者がほとんどいない深夜に時速20キロ程度で走れば、事故の危険性は低いのではないかと考えた。昼夜で道路の使い方を変えれば実現できないか、地元の商工関係者や国の担当者と相談しているという。
東大院生の嶂南(やまなみ)達貴さん(24)は、英ロンドンの実証実験から未来の街のイメージを膨らませる。実験では歩行者や自転車、自動車の動きなどに合わせて、道路上のLEDが必要な場所に横断歩道や自転車用の停止線を点灯させられるという。「渋谷のスクランブル交差点もハロウィーンに合わせた装飾ができるかもしれない。道路は移動のためだけでなく、街の一体感を高める役割があっても良い」
一方、自動運転のウェブメディア編集者で東大院生須田英太郎さん(27)は自動運転の弊害も心配する。街を歩かない人が増えたり、インターネットとつながった「コネクテッドカー」で特定の飲食店ばかりが推薦され、多くの店が寂れてしまったりする可能性を考える。普段は自転車移動で体を動かすのが好きだといい「散歩しやすい道を作ったり、屋台で通りをにぎわせたり街を歩く楽しさを作る仕組みがますます大切になる」
この対話集会「市民ダイアログ」は、11月3日午後3時~5時半、東京ビッグサイト会議棟で開催される。当日参加もできる。(杉本崇)