第2ラウンドでティーショットを放つ小鯛竜也
(29日、男子ゴルフマイナビABC選手権)
降雨中止で小鯛がプロ初優勝 ゴルフ・マイナビABC
初優勝を知らせる中止決定を聞いたとき、小鯛竜也はロッカールームの一番奥にいた。人目を避け、集中力を高めるためだ。勝負の気持ちを切らさなかったところに栄冠が転がり込んだ。「ホッとした気持ち」
中学3年時に日本ジュニア2位に入り、17歳でプロ転向。ただなかなか芽が出なかった。腐りかけていた時期もあったが、転機は3、4年ほど前だ。ゴルフ場のキャディーをしていたゆいさん(34)と結婚し、長女仁望(にの)ちゃん(3)が生まれた。「俺は何をしているんだ。稼がないと」
この時期、知り合いに誘われて同年代の先駆者、石川遼(26)と年末の沖縄合宿をともにした。2~3週間、1日約700球を打ち込み、手の皮がめくれて血豆ができた。自分の甘さ、プロの厳しさを痛感した。昨季は下部ツアーで上位に入って今季前半戦の出場権を得た。さらに成績を残し、後半戦も出場できるようになった。
今季はドライバーが安定した。ティーアップをホール全体を見られる位置にしたことで攻め方が明確になった。振りやすくなり、精度が増した。さらに地元・関西での大会。兵庫県加東市にあるジュニア時代から慣れ親しんだコースで、神戸市に住む家族も応援にきた。
11カ月の長男、士和(とわ)くんも合わせて2児の父だ。「ほかの選手に迷惑をかけないか、心配になる」と語るが、自宅に帰ればアンパンマンの絵を描いて子供たちを楽しませるパパの表情は、うれしそうだった。
優勝の重圧と戦う最終日を経験しなかったから目標は明確だ。「4日間戦って優勝する。続けて2勝、3勝したい。すぐ準備です」(有田憲一)